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2010.03.22

「薔薇とサムライ GoemonRock OverDrive」(その二) 新たなる五右衛門物の誕生

(感想の続き、後半部であります)
 と、(上演が始まったばかりということもあり)内容にはあまり触れずに本作を紹介する分には、前回の感想で終わってしまうのですが、それでは少々もったいない
 …というわけでこのブログらしい御託を並べておきましょう。

 実はこの舞台のことを聞いて以来、一つの疑問が頭にありました。果たしてなぜ、五右衛門なのかと。

 その一でも触れたように、本作は「五右衛門ロック」の続編に当たる作品です。
 しかし、主人公が古田五右衛門であることを除けば、本作はそちらとの関係はほぼなきに等しく(前作の曲は一曲のみ流れますが…それがまたいいところに流れるんだ! というのはさておき)、独立した作品となっています。
 これは言い換えれば、五右衛門が登場する必然性は、実は非常に小さいということとほぼイコールでしょう。
 それが何故、再びの五右衛門なのか…それを見極めたいと、実は密かに思っていたのです。

 そして、その答えはと言えば、私なりには見えたようにも感じます。
 本作を、アンヌを主人公の一人に据えた一つの舞台として成立させるために、五右衛門の存在が必要だった、と。

 本作で物語の中心にいるのは、実は五右衛門ではなく、アンヌであります。
 アウトローとして暴れ回る海賊だったアンヌが、しかし途中で国という体制を背負い、維持する側に回ることになるという立場の変化(この辺りいのうえ歌舞伎、というより中島かずき作品の視点の変化と重なる点があって実に興味深いのですが、それはさておき)から生じるドラマが、本作の中心となるわけです。

 しかし、そのドラマを深めるために、そしてそれをエンターテイメントとして成立させるために――アンヌの想いを知りつつ、しかし彼女のいる世界の外側に立つ存在、それが必要だったのではないかと感じるのです。

 外側に立つのは、彼女と本来は遠ければ――物理的にも、思想的にも――遠い存在であるほど良い。そしてもう一つ、彼女に負けないキャラクター性を持っていなければならない。
 そのようなキャラクターを、あくまでもアンヌを中心に立てつつ(舞台という限られた時間空間で)描くことができるか?

 ――その答えが、古田五右衛門の再登場ではないでしょうか。
 遠く日本から流れてきた(そしてまたいつか流れていく)、権力には決して屈しない大泥棒。
 その名を聞けば、誰の頭にもほぼ共通のイメージが沸く――それでいて空想の余地が十二分にある――有名人。
 ついでに言えば、もう新感線キャラクターとしてデビュー済み、古田新太のイメージにもぴったりとくれば、これはもう五右衛門以外考えられないのです。


 …というのは、これはまず結論ありきのお話であって、牽強付会にもほどがあるというのは、自分でもよっくとわかっております。
 しかしこう考えてみると、華麗に花開きながらもその土地に根つく「薔薇」と、中途半端でも己一人の誇り高き魂を抱いて旅する「サムライ」(「侍」に非ず)の在り方の違い、そしてそこから生じる物語のダイナミズムという構造が見えてくるようで、面白いではありませんか。


 いずれにせよ、新感線は凄いキャラクターを手に入れた、というのは、間違いないことでしょう。
 歌舞伎には「五右衛門物」と呼ばれる作品群がありますが、これはもう、いのうえ歌舞伎における「五右衛門物」が成立したと思って良いのではないでしょうか。
(さらに言ってしまえば、本作はあくまでも「五右衛門物」なのだから「五右衛門ロック」と設定が合わなくても問題ないのです)

 次なる「五右衛門物」、三度目の「五右衛門ロック」に、今から期待している次第です。いやいやその前に、「薔薇とサムライ」をもう一度見なくては!


「薔薇とサムライ GoemonRock OverDrive」 公式サイト / 戯曲 Amazon
薔薇とサムライ


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