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2010.03.25

「浪華疾風伝あかね 弐 夢のあと」 少女が選んだ名前

 自分と瓜二つだという天秀尼に会うため、彼女が隠れているという吉利支丹村に向かった茜。しかしそこで茜は、鴻池家の用心棒・甲斐に捕らわれてしまう。奉行所に連行された鴻池新六と引き替えに、大坂城代に引き渡される茜。果たして誰が本当の姫なのか、真田大助の真意は、そして大坂を守る闇の一族とは…

 戦乱からから復興を遂げつつある大坂を舞台とした青春時代伝奇活劇「浪華疾風伝あかね」待望の第二巻であります。
 豊臣家滅亡から八年後、豊臣秀頼の娘・茜が、生き別れの弟・国松を求めて大坂を訪れたことから始まった第一巻では、母と信じていた人が茜を豊臣家の姫ではないと告げた上で、彼女の目の前で自決するという衝撃的なラストを迎えました。

 その衝撃を引きずりながらも、この第二巻では、茜は事の真偽を確かめるため、「母」とともに大坂にやって来たという天秀尼――千姫の庇護の下、鎌倉東慶寺に入れられた秀頼の娘ですが、本作では茜の身代わりでは? という設定――を探して行動することになります。

 彼女の忠臣、頼みの綱であり、そして今ではそれ以上に想う相手である真田大助は、理由も告げずに彼女のもとから去り、「母」のいまわの際の言葉から、やはり自分は豊臣の姫ではないのか、自分こそが身代わりだったのか!? と、自らのアイデンティティに関わる重大な疑問を抱えながらも、茜は真実を求めて走り続けるのです。

 本作は、伝奇小説としてと青春小説としてと、二つの側面を持つ作品です。
 そんな本作において、生きていた秀頼の子、豊臣の隠し金の存在といった伝奇ものの要素と、自分自身が何者なのか、自分はどう生きるべきなのかといった青春ものの要素と、二つの要素を体現し、そして統合するのが、茜その人であることは言うまでもありません。
(ちなみに、茜が今後力を減じていく武士という立場を代表する一方で、もう一人のヒロインであるお龍が、これから発展していく商人という立場を代表するという配置も、実に興味深いところです)

 その彼女が、己が姫たることを否定された上、ついに徳川方に捕らわれるという逆境――これもそれぞれの要素を象徴するものであります――の中で、己の名乗りを上げ、それに応えるように呉越同舟の一大バトルが開始されるクライマックスは、そんな本作の二つの要素が見事に統合され、昇華される名シーン。大いに興奮させていただきました。


 さて、茜を巡る状況は、この第二巻のラストで一応の落ち着きを見せますが、しかし、本作で示された謎の全てが解決したわけでは、もちろんありません。
 茜の旅の目的である国松は果たしてどこにいるのか。大助と甲斐の因縁の元である豊臣の隠し金の在りかは。そして大助は本当に単なる鉄面皮の美形なのか。

 作中ではついに在天別流の存在が本格的に語られ、いやがうえにも盛り上がる本作。
 残念ながら第三巻はまだ先になるようですが、しかし少しでも早く続きが読みたい! と心より祈っている次第です。


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