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2010.03.27

「陣借り平助」 颯爽たるいくさ人見参!

 時は群雄割拠する戦国時代。緋色の愛馬・丹楓を駆り、数々の戦場に颯爽たる姿を見せる若武者・魔羅賀平助。特定の主君に仕えず、戦場では必ず寡兵・劣勢の陣に加わる彼を、人は「陣借り平助」と呼んだ。今日は尾張、明日は甲斐…稀代のいくさ人・平助は、今日も戦場を駆け抜ける。

 今頃で本当に恐縮ですが、続編「天空の陣風」が刊行されたこともあり、宮本昌幸先生の短編連作「陣借り平助」を読みました。
 一世の冒険児にしていくさ人、「陣借り平助」こと魔羅賀平助の痛快極まりない活躍を描いた、まさに宮本時代活劇ここにありと言うべき快作であります。

 陣借りというのは、戦国時代の合戦の際に、正規軍以外の兵(浪人)が、手弁当で一方の勢力に味方して戦うことを言います。
 正規軍ではないので賃金が支払われるとは限らず、むしろ合戦で活躍することで己の武名を高め、仕官を狙うという示威行為的要素が強いもので、(本書でも語られますが)不始末をしでかして織田家を追われた前田利家も、一時期これを行っていたとのことです。

 さて、本作の主人公・平助が行うのも、もちろんこの陣借りですが、しかし、通常のそれと異なるのは、彼が仕官を望まないことでしょう。
 足利義輝に「百万石に値する」と評されたという――これはつまり、宮本作品においては地上最強の称号を得たのとほぼ同様を意味するわけですが――平助がその気になれば、どの家にも仕官は可能であるはず。
 にもかかわらず、どの家にも仕えず…いやそれどころか、合戦デビューである厳島の戦以来、わざわざ合戦で負けそうな側について大暴れすることをもって快とする、根っからの自由人なのであります。

 そんな彼の活躍が描かれるのは、本書に収録された以下の七編。必ずしも合戦が舞台ではない作品もありますが、しかしいずれも錚々たる面々が顔を出す物語ばかりです。(カッコ内は舞台となった戦と平助が属した側)

「陣借り平助」(桶狭間の戦 織田信長)
「隠居の虎」(野良田の戦 浅井久政)
「勝鬨姫の鎗」(長尾景虎の小田原攻め 北条綱成)
「落日の軍師」(川中島の戦 山本勘介)
「恐妻の人」(三河平定 松平元康)
「モニカの恋」(堺の町衆の争い 日比屋了珪)
「西南の首飾り」(横瀬浦焼き討ち 大村純忠)

 いやはや、時代の動くところ、陣借り平助ありであります。

 しかし本書の読後感を素晴らしく爽やかなものとしているのは、平助が単なるマッチョ原理に基づいた戦士ではなく、真に弱者の立場で考えられる、強さと同時に優しさを持つ、有情の人物である点であります。

 我らが平助がその力を振るうのは、実は戦場において、武士のためのみではありません。
 か弱き女性のため、次代を案じる老人のため…戦場で戦う者のみならず、その陰で嘆き悲しむ者たちのためにも、平助の槍は振るわれるのです。

 彼がそのような一種騎士道的な、当時としてはある意味破格の精神を持つに至った理由は、本書の後半で語られる彼の出生にも関わるのですが、しかし彼の場合は、平助は平助だから、という理由で十分に思われます。

 私は個人的にいくさ人という言葉には男性原理主義的なものを感じて、あまり良いイメージを持っていなかったのですが、平助のような人物をいくさ人と呼ぶのであれば、これは大いに賞賛すべきものと感じます。

 さて、平助の旅がどこまで続くか、それはわかりませんが、まだまだ戦国の世は続きます。強さと優しさを合わせ持ったいくさ人の活躍が、これからも楽しみでなりません。とりあえず早く「天空の陣風」を読まなければ…


 それにしても丹楓のツンデレバトルヒロインぶりは異常。
 「恐妻の人」のラストの対決は、(冷静に考えると無茶なのですが)丹楓タンの素晴らしいアシストのおかげで、本書随一の燃える対決シーンとなっております。

「陣借り平助」(宮本昌孝 祥伝社文庫) Amazon
陣借り平助 (祥伝社文庫)

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