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2010.03.10

「竹島御免状」(感想・裏) 十兵衛の原動力は何処に

 前回に続き、「竹島御免状」感想。今回は裏面であります。
 今回もネタバレがありますのでご注意下さい。

 しかし…本作には大きな問題点が存在すると感じます。

 実は本作は、荒山柳生もののみならず、山田風太郎先生の名作「魔界転生」の続編としても描かれています。(「柳生忍法帖」、そして「柳生武芸帳」(!)の続編でもあるようですが)
 これは匂わすというものではなく、作中ではっきりと、荒木又右衛門が以前にも甦ったことがあると、その時の十兵衛との戦いの模様まで描かれているのですから間違いありません(躇錯剣に触れないレベルではありますが)。

 …が、これは別に構いません。ちょっとどころではないやりすぎ感はありますが、自作が実は他の作家の作品に繋がっていくという趣向は、山風先生ご本人もしばしば使っていたものであり、私としてもそういう趣向は嫌いではない…というより大好物であります。


 しかし、本作でどうにも受け容れがたいのは、その本来お遊び、読者サービスであるはずの部分が、本作の主人公の一人である、柳生十兵衛の行動原理にかなり密接に関わっている点であります。

 本作の十兵衛は、いまだ矍鑠たる剣の達人でありながらも、人としては、かつて愛した者も、友も、敵すらも全て失った、老残の身。その十兵衛が、かつて死闘を繰り広げ、そしてその時にアクシデントに近い勝ちを拾った強敵と再度相まみえた時、彼との対決に己の残された全てを燃やすことは、無理もない話――いや、大いに盛り上がる展開であります。
 …それが自作の中のみで築かれた設定であれば。

 主人公を動かす想いの源となるところ、主人公が最後の対決に向かう原動力を、他の作家の作品に求めるというのは、小説としていかがなものでしょう。
 「魔界転生」自体がそういう作品、という声はあるかもしれませんが、あちらはそれ自体を物語の主軸に据えた点で、作中の要素の一つに留まる本作とは異なると考えます(そしてその一要素に、突然クライマックスでクローズアップされた感にも違和感はあるのですが…)。

 もちろん、荒山先生の山風作品、山風十兵衛に対する愛情と敬意を疑うものでは全くなく、「死なない剣豪」vs転生衆というアイディアも実に面白いと思うものではありますが――しかし、これは自分で自身の価値を下げてる行為ではありますまいか。

 本作には他にも、ネタを投入しすぎて物語の統一感に欠ける点や、終盤に敵の企みの全容を一人のキャラに全て語らせてしまうという点などの問題点はありますが、それは荒山作品にはまま見られる点であり、そこは一種持ち味と解釈しても良いでしょう。
 しかしこればかりは――


 これはあくまでも作品の一要素であって、そこに目くじらを立てる私がおかしいのかもしれません。
 しかし、荒山作品のパロディもシリアスも一緒くたの無茶苦茶な味わいを愛するからこそ、本作を、一個の荒山先生自身の作品として(本当に大袈裟に言えば)成立させないような使い方は、残念というほかありません。

 前回述べたとおり、なまじ荒山ファン、時代伝奇ファンには実に面白い作品であるだけに、この点が大きく気になってしまったことであります。


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竹島御免状


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