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2010.03.04

「コギャル忍者・萩王見参! 富士魔界篇」 人外魔境に忍者舞う?

 言葉遣いに少々問題アリの伊賀忍者・観音萩王は、統領の百地丹波から、甲斐の武田信縄の下で任に就くよう命じられる。そこで思わぬ成り行きから、富士山麓に存在するという幻の黄金郷・家基都之宮の探索に向かうことになった萩王。おかしな面々と旅に出た萩王が、家基都之宮で見たものとは…

 時代小説作家がライトノベルも書く、というのはさほど珍しいことではありません。この「コギャル忍者・萩王見参! 富士魔界篇」の作者・沢田直大氏は、学研M文庫でイキのいい忍者ものを幾つも執筆されていた、沢田黒蔵氏の別ペンネームであります。
 当然(?)、ライトノベルでもユニークな忍者ものが書かれるもの、と思いきや、これが蓋を開けてみれば実は…という一種の怪作なのでした。

 あまりに印象的なタイトルロールとなっている主人公の美少女忍者・萩王は、霊術を得意とする伊賀忍者。
 忍者にしては脳天気な性格と、「○○だけどー」「△△だしー」と語尾を伸ばす喋り方(任務で横浜に滞在しているうちに訛ってしまった、という素晴らしい設定。うむ、理に叶っている…?)から、統領の百地丹波からは三歳児呼ばわりされるような問題児であります。

 その萩王が、甲斐の守護・武田信縄(信玄の祖父)の依頼で向かうことになったのは、禁断の地とも黄金郷とも地元に伝えられる家基都之宮なる地。
 かの新田四郎が迷い込んだ富士の人穴の、そのまた先にあるという伝説の地を探るため、萩王は、中年ダメ忍者・武田家の剣士・土地の子供・謎のカエル忍者というおかしなパーティーで探索行に向かってみればそこは!

 …というわけで、実は本作は、キャッチーなノリの忍者ライトノベルの皮を被った、秘境冒険もの・人外魔境ものとも言うべき作品なのです。

 迷い込んだ人間の感覚を狂わせる樹海、地底に広がる人穴の脅威はまだまだ序の口、ついに彼女たちが辿り着いた家基都之宮に待っていたのは、異形の怪物の群れと超古代文明の遺跡――

 かつてはエンターテイメントの世界で一ジャンルを形成しながら、いまや時代伝奇もの以上に滅亡の危機に瀕している秘境冒険ものを、こういう形で描くという手があったか! と、思わぬところで旧友に再会したような、嬉しい驚きを味わいました。


 内容的には、古史古伝色が相当強く、終盤の展開も萩王の神懸かりっぷりにちょっと引く部分はあるのですが、今日日(といってももう十年近く前の作品ですが…)本当に珍しい秘境冒険ものとして――そしてそれを時代伝奇ものとリンクさせて――成立させてみせたことは、大いに評価すべきかと思います。
 個人的には、忍者・秘境・怪物・武田・超古代…とくると、宮崎惇先生の「魔界住人」を思い出してしまうのですが、それはマニアの僻事かな。

「コギャル忍者・萩王見参! 富士魔界篇」(沢田直大) Amazon

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