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2010.04.24

「戦国妖狐」第4巻 妖精眼に映るもの

 水上悟志の時代アクション漫画「戦国妖狐」の第四巻が発売されました。
 第三巻のラストでは、ヒロイン(?)の一人である灼岩がまさかの退場で大いに驚かされましたが、この巻ではある意味物語の鍵を握る人物(?)が登場、物語は大きな展開期を迎えることになります。

 赤子を産む母親を守り、霊力を使い果たして岩と化した灼岩。
 彼女との突然の、理不尽な別れに一番衝撃を受けたのは、やはり、彼女に慕われていた真介であります。

 仇である四獣将への激しい怒りと憎しみに取り憑かれた、魔剣の遣い手としての覚醒したかに見える真介。
 しかし――たとえ大事な者を殺した相手でも、生かしておけば必ず大きな障害になる敵でも、命を易々と奪って良いものか…
 これまでのヘタレキャラぶりがうって変わったような変貌を見せつつも、人としての自分のあり方に悩み続ける真介は、やはり本作の主人公の一人なのだと感じさせられます。

 そしてまた、ある意味真介以上の変貌を見せつつあるのが、これも本作の主人公の一人である迅火であることは間違いありません。
 人のぬくもりを知らずに育ち、友としてきた闇を人に殺されて極度の人嫌いとなった迅火。彼をその境遇に追いやった原因、妖精眼の何たるかが、今回描かれます。

 妖精眼と言えば、同じ作者の名品「散人左道」、おお懐かしい…そういえば妖精眼を持つ者は双子という設定があったな――などと思っていたら、その妖精眼を通じて描かれるのは、こうくるか! といいたくなるような形での彼のキャラクターの掘り下げ。
 イタさギリギリのところまで踏み込んでのキャラクターの内面描写は、水上作品でしばしば見られるところではあります。
 しかし今回は、パワーアップのための修行という、少年漫画的ベタな展開の中でそれを繰り出してくるのに感心させられた次第です。(そしてそれは、本作における強さが、単なる戦闘力の高さとイコールではないことを示していると言えるでしょう。)


 しかし、惜しむらくは――毎回言っているような気がしますが――本作における戦国らしさというものが、まだ見えてこないように感じられます。

 戦国らしさというのは、何も戦国武将などが顔を出すことでも、有名な事件が描かれることばかりではありません。
 人が人を殺す極限状態が普遍的に存在する時代でしか描けないもの――それを見たいのです。

 人と闇の戦いにどれほどの意味があるのか?
 そして、人があるいは闇が、たとえそれに理由があったとしても、他者の命を奪うことは許されることなのか――

 この時代でなければ描けないその答えが、いつか本作で描かれることを期待しているところです。

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