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2010.04.14

ゾンビ時代小説特集 第二回「関ヶ原幻魔帖」

 坊津の漢方医・入来玄蔵は、師匠の手紙で呼ばれ、京に向かった。しかしそこで待っていたのは師の墓と、怪人・外道院が率いる奇怪な一団だった。師が生み出したという死なずの怪物・死霊人――天下分け目の合戦を前に、死霊人軍団を生み出そうとする外道院一味に、玄蔵は医術と武術で戦いを挑む。

 ゾンビ時代小説特集第二弾は、意外な作者が意外な舞台で描いた作品。
 作者は火坂雅志、舞台は関ヶ原――昨年の大河ドラマ「天地人」の原作者が描く、ゾンビ活劇であります。

 火坂先生が、現在のように歴史小説メインとなる前に、伝奇色の強い時代エンターテイメントを量産していたことは、ファンであればよくご存じかと思いますが、本作は言うまでもなくその中でも最も尖った作品。
 何しろ、関ヶ原の合戦の秘密兵器として徳川軍がゾンビ――本作では死霊人といういかにもそれらしい語が当てられていますが――兵団を組織! いやそれどころか、石田三成その人がゾンビに!? という驚天動地の内容なのであります。

 しかし、どれだけ無茶に見える作品であろうとも、きっちりと理屈を合わせてくるのは、ある意味火坂先生の火坂先生らしいところ。
 本作の主人公・玄蔵が挑むことになる死霊人誕生の秘密と、死霊人撃退の方策…その中で描かれるのは、ある意味実に理に叶ったゾンビ理論(?)。

 その内容は読んでのお楽しみですが、戦国時代にゾンビを登場させるのに、最も無理のない手段はなにか…
 それを検討した上で選んだ手段が、正統派かつ意外にゾンビもので取り上げられることが少ないように思えるものであったところに、火坂作品の持つ一種のリアリズム、まじめさが感じられるのです。
(もっとも、冷静に考えると突っ込みどころがなきにしもあらずではあるのですが…)


 正直なことを言えば、本作は全体として見た場合、この時期の火坂作品によくある「普通に面白い」作品以上でも以下でもありません。

 しかし、戦国時代の合戦にゾンビ兵団を!(それも合理的なアイディアで)というのは、これは今見ても実に魅力的なアイディアであることは間違いなく、それを見事に実現してみせた作者の手腕、そして何よりもその嗜好に、心から敬意を表する次第です。

 …それにしても火坂先生、後に外道院の正体を主役にして一本作品を書いているのは、なんと表すべきか。
 その辺りから考えても、ある意味幻の作品ではありますが、しかし、埋もれさせておくにはやはり惜しい作品であります。

「関ヶ原幻魔帖」(火坂雅志 ミリオン出版大洋時代文庫) Amazon
関ケ原幻魔帖 (大洋時代文庫)


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