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2010.04.29

「佐和山物語 君と別れのくちづけを」 希望に繋がる別れという道

 佐和山を訪れていた徳川秀忠が突然人事不省となり、暗殺未遂の嫌疑で捕らえられてしまった井伊直継。ようやく元いた世界に戻る方法を見つけたあこは、直継を救うためこの世界に残り、家老名代の主馬と犯人を探すことになる。しかしその前に現れた大谷吉継にあこは拐かされて…

 鳥居家の娘・あこと、井伊家の若き当主・直継の恋の行方を描く「佐和山物語」の第四巻であります。

 前作のラストで、京に向かう途中佐和山に立ち寄った秀忠が人事不省となり、当然ながら(?)責任を問われて捕らえられてしまった直継。
 一方、自分のいた世界から三ヶ月時間を遡って佐和山に来てしまったあこは、ようやく元の時間に帰る手段を見つけるのですが…
 しかし、今いる世界が、自分が本来属していたのとは別の時間軸にある世界であると――すなわち、一度戻れば、想いを寄せたこの世界の直継には永遠に会えないと知ってしまい、より悩みを深めることに。

 さらに、この二人を巡る人間関係も色々な意味で入り組んできて、どうにも重たい内容となっていたのですが――

 さて、この巻では、元の世界に戻ることを一端置いて、あこは直継のために奔走することになります。
 しかし彼女を待っていたのは、秀忠に呪いをかけた犯人にして、盟友・石田三成とともに怨霊と化して徳川の世を覆さんと企む大谷吉継。
 吉継に捕らえられ、再び三成のもとに連れされられたあこは、自分に秘められた驚くべき力を知ることになります。
 天下を覆すどころではないその力を悪用させぬため、ついにある決意を固めるあこですが――

 そんな、ある意味最大の危機を乗り越え、ついにお互いの想いを確かめたあこと直継。
 もう、このむせかえるようなラヴっぷりはおっさんには目の毒――想定読者の正反対にいるような存在には発言権はないですが――ではありましたが、実に初々しい中に妙な生々しさがあって実によろしい。
 ここに辿り着くまで、ずいぶんと長い時間がかかった気がしますが、想いが積み重なり、二人の間の溝を埋めるまでに、必要だったということでしょう。

 そして、その二人が選んだのは、別れという道。しかし、別れとは悲しみのみを生むものではありません。別れて初めて踏み出せる一歩もある。そしてその一歩が再会への希望に繋がることだって――

 そして、この二人の間の関係の他にも、この巻においては、入り組んだ人間関係のそれぞれに、一定の答えが示されることとなります。
 これまで、果たしてどうなるものかと(いい意味で?)心配させられた本作ですが、暗雲が晴れて、実に爽快な結びだったかと思います。


 しかし、これでシリーズ終了? と思ってしまうような内容と幕切れながら、まだシリーズは続きます。
 別れた二人の進む先は、そして二人が抱いた希望の行方は、まだまだ健在の三成一党の動きは――さて、今後どのようなドラマが展開されることになるか、期待であります。


 と――蛇足かもしれませんが、どうしても不満な点を一つだけ。それは、キャラクターの口調であります。
 お話が良くできていれば良くできているほど、キャラクターの現代人喋りが目につくのが、残念でなりません。
 特に今回の影の主役とも言うべき主馬は、キャラ的には面白いのですが、さすがにこの喋りはいかがなものか。

 もっとも、この辺りまでガチガチにすると、読者がついてこれなくなる危険性があるのですが――いや、これはおっさんマニアの繰り言であります。

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