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2010.04.06

「鬼しぐれ 花の小十郎はぐれ剣」 かぶき者、最後の大喧嘩

 天下のかぶき者で大ホラ吹きの戸沢小十郎は、大御所・徳川秀忠の囲碁指南役として呑気に暮らす毎日。しかし将軍家光は、秀忠薨去を期に、弟・忠長と並んで不倶戴天の敵である小十郎抹殺を柳生に命じる。自ら牢人となり、全ての後ろ盾を捨てた小十郎は、家光に対し命懸けの喧嘩をふっかける!

 大ホラ吹きでへそまがり、剣の腕は武蔵や十兵衛に匹敵するという天下御免のかぶき者・戸沢小十郎の活躍を描くシリーズ久しぶりの第四弾――そして最終巻であります。

 佐竹藩士という身分はありながら、大老・土井利勝のもとに出入り勝手、それどころか江戸城や御所にまで顔を出す怪…いや快人物小十郎は、これまで様々な権力者を相手に喧嘩を繰り広げてきましたが、今度の喧嘩相手はなんと日本の頂点・将軍家光であります。
 かつて江戸市中で辻斬りを行っていた時に小十郎に出くわし、散々に打ちのめされた家光にとって、小十郎は、将軍位を争った弟・忠長に匹敵する恨み骨髄の相手。
 小十郎や利勝の奇計により、大御所・徳川秀忠の囲碁指南役となることで、家光の追求の手をかわした小十郎ですが、しかし秀忠が亡くなったことをきっかけに、事態は大きく動き出すことになります。

 というわけで、たかが一人の男を相手に、柳生一門を――すなわち幕府最強の戦力を――動かして戦いを挑む桁外れのバカ将軍と、その戦いを真っ向から(かぶき者的意味で)受けて立つ桁外れのかぶき者という、とんでもない戦いが展開されるという趣向。

 ――が、実はこの本題に入るのが、実は大部の作中の丁度半分あたり。そこまでは、もう一人の家光の宿敵・駿河大納言忠長が蟄居させられ、さらに改易・逼塞に追い込まれていく様が描かれていくことになります。
 この辺り、小十郎の活躍を待っている身とすればいかにも長い…と言いたいところですが、徳川家、つまりは幕政の行方を巡るマクロな動き、小十郎とは遠く離れたよう話題でありつつも、小十郎をはじめ、シリーズお馴染みの登場人物たち――利勝、沢庵、宗矩――の目を口を通じて描かれるため、個人的には全く退屈することはありませんでした。

 さて、そして始まる小十郎の戦い。佐竹藩士という身分を捨て、利勝との繋がりを捨て、背水の陣で挑む彼の目的はただ一つ、家光の首(!)。
 バカ将軍に自分がバカであると叩き込み、バカを道理で説得と思いこんでいる幕府の知恵者たちを笑い飛ばすため、小十郎は命を的に大喧嘩を始めることとなります。
 これまで口八丁手八丁、様々な相手と戦い、到底不可能と思えることを成し遂げてきた小十郎ですが、さすがに今回ばかりは相手が大きすぎる…などとは、シリーズファンであれば思いますまい。
 いかに小十郎が天下を相手に繰り広げる喧嘩祭の顛末を、ぜひご覧いただきたいと思います。


 …しかし、どんな祭にも終わりの時は訪れます。
 大喧嘩の末に待っていたのは、小十郎も思いも寄らぬ、ほろ苦い結末。それを知った時、小十郎の胸に去来したものが果たしてなんであったか――
 考えてみれば、結末で描かれるある史実は、「天下泰平」をある意味象徴するが如き事件。騒動あるところに活躍の場のあった小十郎も、そろそろ休むべき時、ということなのでしょう。

 それはもちろん寂しいことではありますが、しかし、これまでの痛快な活躍を考えれば、お疲れ様でした、とファンとしては心から言いたいと思います。
 もちろん小十郎がそれを耳にして喜ぶとは思いませんが――へそまがりの血が騒ぎ出してもうひと騒動、となれば、これはこれでこちらも望むところ、ではあります。

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