「機巧奇傳ヒヲウ戦記」 第18話「嘘! 父の見た夢」
ついに父・マスラヲと再会したヒヲウたち。しかしマスラヲは風陣の大頭の客分となっていた。里が風陣に滅ぼされたと話しても信じようとしないマスラヲ。シシとマチは、真実を知る才谷を連れてくるため町に向かい、そこで再会した服部正義から、風陣が華と雪を処刑しようとしていることを知る。しかし、才谷から真実を聞かされてもなお、マスラヲは動こうとしない。ヒヲウは父と別れ、二人を助けに向かう。
いよいよクライマックス間近、今回はメカアクションはありませんが、しかし人間ドラマが実に面白い回であります。
前話ラストで父・マスラヲとついに再会したヒヲウですが、しかし尊敬する父は敵である風陣とともに行動していて…
マスラヲと風陣の繋がり自体は、これは視聴者である我々には既に提示されていたことではありますが、しかしそれでも見えてこなかったのはマスラヲの真意。
この手のシチュエーションはアニメでもしばしば見かけます。
大体は敵を倒すために潜入していたか、洗脳されているか、騙されているか…というのが定番ですが、しかし、本作ではそのどれとも全く異なる答えが示されます。
確かに、風陣が機の民の里を襲撃したことは知らされておらず、その意味では彼は騙されていたかもしれません。
しかし、その真実を知ってもなお、マスラヲは風陣から離れようとはしません。息子たちと袂を分かつ結果となっても。
彼の行動の根底にあったのは、言うなれば、技術者として己の能力を存分に発揮したい、己の夢を叶えたいという想い。
そのためには、その行動に難はあったとしても、唯一それを可能とする風陣が必要だった――それこそが、マスラヲの真実でありました。
(当初は、もう少し隠せばいいのに…と思ったマスラヲの存在ですが、しかしこの辺りの展開を計算に入れてのことだったのかと今更ながらに気付きます)
それは、技術者としてのエゴと表することができるものかもしれません。
たとえその夢が純粋なものであったとしても、それを邪な目的に、人を害するために用いられる危険性を忘れてはいけないのです…
などと言うのは、確かに簡単であります。
しかし、技術者の、いや人間の、自己実現を望む想いを非難することは――つまりは他人の夢を否定することは――難しいものであることも、また事実ではないでしょうか。
技術者の持つ能力は、何のためにあるのか――言い換えれば、技術者と社会はいかに接するべきかというテーマは、會川作品では時折見受けられるものですが(たとえば「大江戸ロケット」の終盤など)、この辺り、半ば理系の職場に身を置く者としては、非常に考えさせられる問いかけであります。
閑話休題、そうであるからこそ、そのエゴに対する内面からの歯止めとして存在するのが、物語の冒頭から幾度も語られる機の民の掟であるはず。
しかし、マスラヲの悲劇(と言うのは時期尚早かもしれませんが…)は、「機巧はマツリのために用いるべし」の「マツリ」に「政(まつりごと)」の意味を見出してしまったことにあります。
そしてそのきっかけとなったのが、友である「りゅう」(才谷)の言葉であるとは、何という皮肉でしょうか。
もちろん、マスラヲもその自分の方向性が、全面的に正しいとは思っていないのでしょう(その点で、自分たちの力を世界に示すという似たような目的を持ちながら、そのための所業に疑問を持たないクロガネとは、似ているようで彼は異なります)
今回のエピソードの中で、幾度かマスラヲはヒヲウに語りかけます。
自分の心に従ってやるべきことをやれ。お前はお前の夢を見ろ。
それは、父として子供に生きるべき道を示す言葉であると同時に、自分の行動に対するエクスキューズに見えてしまうのは、これは私が年を取ったせいでしょうか?
そして、ヒヲウがその言葉の中の想いに気づけないでいる中、年長者のサイのみが、一人、父の言葉を予想していたが如き表情を見せ、そして珍しく声を荒げる描写には、唸らされた次第です。
さて、マスラヲの話ばかり延々と書いてしまいましたが、いよいよクライマックス間近。
服部正義、清河、そして益満(急進派の考え方に反対していた彼が考えを改めたのが、才蔵を死に追いやったためという理由に納得)と、新月藩に役者が集まり始めました。
ヒヲウは、マスラヲは、そしてアラシは、何を考え、どのように行動するのか――しっかりと見届けたいと思います。
ちなみに今回のアバンは、前回に引き続き橘=ヤマトフ氏の物語。福沢諭吉らがおろしあで出会ったのは、日本から逃亡したヤマトフ氏でした…という内容で、海の向こうでヤマトフがマスラヲを待っていたということが語られます。
彼もまた、自分の能力を発揮できる場所を求めて彷徨っていたのでしょうか…
しかしマスラヲさんが会ったのがおろしあの難破船で良かったと思います。これが空の獣の船だったりした日にゃあ…
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