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2010.05.14

「風が如く」第8巻 そして胸踊る今へ

 かぐや姫の五つの宝物を巡って、五右衛門一派と織田信長が死闘を繰り広げる冒険活劇「風が如く」も、この第八巻でついに完結。
 どんでん返しに次ぐどんでん返しの展開の果てにたどり着いた結末は…

 最終巻の幕開けは、五右衛門の師・百地三太夫と文字通りの悪鬼羅刹・斬鬼の対決から。
 ついに五右衛門との間の誤解も解けた三太夫は、その無尽蔵の強さを発揮して斬鬼を圧倒(いきなり波動拳使い出した時はもうどうしようかと思いましたよ)するも、すでに深手を負っていた身では…

 ここで三度五右衛門が竜巻烈旋を発動。かつて彼が伊賀の里を追われるきっかけとなった技が、同じ地で、今度は師を救うために使われるという泣かせるシチュエーションで、五右衛門の成長をきっちりと印象づけてくれるのが、やっぱりうまいなあ、と感心いたします。

 と、ここからが急展開の連続。
 秀吉と光秀、そして秀吉のブレインにして未来の知識を持つ千利休の三者によって引き起こされた本能寺の変で信長が討たれる(しかも変の模様は描かれず、結果のみ語られる)
→信長暗殺の下手人に仕立て上げられた五右衛門は、京の都を核の炎に包む(!)という秀吉の前に自ら名乗り出て捕らわれる
→ワープくんに金ちゃん坂田さん、三太夫と甲賀忍群、やっぱり生きていた信長と前田利家軍、おまけに桃太子と元鬼と、呉越同舟の混成軍で五右衛門救出へ!
→そしてエピローグへ…

 …と、これはもう誰がどう見ても、打ち切りの駆け足展開そのもの。
 その断片が示された一つ一つのエピソードやキャラクターも実に面白く(特に利家と五右衛門の戦いは見てみたかった)、これをじっくり見せてくれたら…と本当に本当に、残念でなりません。

 特に主人公の危機に、これまでの戦いで出会った仲間たち、そして敵までもが駆けつけての最終決戦――しかも展開次第では利休の暴走による京消滅の危機も十分あり得る――は、これがきっちりと描かれていれば、あの大名作「フルアヘッド! ココ」にも並ぶ盛り上がりになっていたのでは、というのはこれはほめすぎかもしれませんが、ファンとしての正直な気持ちであります。

 が――その残念な気持ちも吹っ飛ばしてくれるのが、爽快極まりないエピローグの存在であります。
 おそらくは五右衛門たちの活躍によりかぐやは救われて歴史は正常に戻り、現代に戻った代わりに戦国時代での全ての記憶を失ったワープくん。
 しかし、本人にもわからぬ喪失感を抱えた彼の前に現れた、破天荒な男、彼こそは…

 と、世界リセットネタに定番のオチではありますが、そこに最後の最後のどんでん返し、こちらの固定観念を逆手に取ったかのような五右衛門の驚くべき正体を織り込んで見せてくれたのが、何とも心憎いのです。


 完全な姿の物語を見たかった、という気持ちはもちろんあります。
 しかしそれでもこの結末は、「風が如く」の戦国冒険譚を見事に締めくくった上で、なお、胸躍るような「今」を期待させてくれる――そしてそれは、作中で五右衛門が語る言葉とも符合してくるのですが――素晴らしい結末であったと思います。
 最後まで読んできて良かった、そう思える作品であります。


 ただ、書き下ろし部分はなくてもよかったかな…とは思います。連載時のままで完結した方が、余韻が残ったかもしれません。

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