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2010.05.02

「刃影青葉城」 空前のスピード感のエンターテイメント

 伊達家の次男・梵字丸を婿にと望む清朝皇帝からの使者が斬殺された。事件で兄を失った汐路は、犯人の浪形半四郎を追って旅に出る。しかし半四郎もまた依頼人に偽金を掴まされ、怒りに燃えて黒幕を追う。さらに梵字丸も彼らの後をついて江戸へ。善魔入り乱れての乱戦の行方は…

 古書店で何の気なしに手にした作品が、思いも寄らず楽しい作品であったと知った時ほど本読みとして嬉しいことはありませんが、本作は私にとってそんな作品の一つ。
 島田一男先生による、第二の伊達騒動とも呼ぶべき事件を描いた娯楽作品であります。

 本作でまず驚かされるのは、冒頭で飛び出すとんでもない伝奇的アイディアであります。
 本作で描かれる事件の発端となるのは、清朝皇帝から遣わされた使者が斬殺され、親書が奪われるという事件。
 伊達家の次男・梵天丸を、皇帝の妹の婿にと望むというその親書の内容もとんでもありませんが、何でそんなことに…という理由がすごい。

 実は清朝の祖先は大陸に逃れた源義経、そして伊達家の祖先は陸奥に残された義経の子――
 つまり遠い縁戚である両者が縁を結ぶことは理に叶っている、という主張なのであります。

 その対応に苦慮しているところに起きたのが、浪人剣士・浪形半四郎による清朝の使者斬殺事件。しかも問題の親書が何者かに奪われたことで、騒動の幕があがることとなります。

 事件の渦中にありながら、悠揚迫らぬ呑気さの伊達家次男・梵字丸。事件の発端となった使者斬殺の下手人でありながらも自分もはめられ、復讐に燃える無頼浪人・半四郎――

 この二人を中心に、数多くのキャラクターが入り乱れて繰り広げられるジェットコースター展開がまた楽しい。
 薄幸の美女、忠義一徹の剣士、脳天気な道中師、徒な独楽使いの美女(その正体がまた凄い!)、公儀御庭番、邪悪な蛇使い…そんな連中が次々と登場して、仇討ち意趣返しに親書争奪御家騒動ととにかく目まぐるしく、賑やかなのです。
 時代伝奇小説ファンでないとわからないような表現をすれば、その空前のスピード感は横溝正史の「神変稲妻車」並みとでも申しましょうか…(わからない? すみません)

 もちろん、こうした人物配置や(そのスピード感はともかく)物語構成は、この手の時代ものの定番ではあるのですが、それでも十分に破綻泣く面白いのは、これはやはり島田一男先生のベテランの腕というものでしょうか。
 少なくとも、キャラクターや物語の深みというものを脇に置いても、それでも面白ければ問題なし、ということは、エンターテイメントの世界にはあるのだと、今更ながらに再確認した次第です。

 とはいえ、あまりにも豪快かつ身も蓋もない結末には、「君たちゃそれでいいのか!」と突っ込みたくなりましたが、それもまあ良し。
 万人には決してお勧めいたしませんが、私は大変楽しく読むことができた作品であります。

「刃影青葉城」(島田一男 春陽文庫) Amazon

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