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2010.05.05

「破矛 斬馬衆お止め記」 真田家の象徴の貫目

 関ヶ原の戦を巡る、徳川家康と真田昌幸の密約を示したことで、一度は危機を逃れた真田家。しかし真田家取り潰しを狙う土井大炊頭は、信之の長男・信吉の死に疑惑を抱く。さらに信之と信政に迫る刺客の影。お家の危機に、斬馬衆・伊織の大太刀が再びうなる!

 三代将軍家光の治世を舞台に、信州真田家を巡る激しい暗闘を描く「斬馬衆お止め記」の第二作であります。

 信州真田家は、言うまでもなく、かつて徳川家康・秀忠に幾度となく煮え湯を飲ませた真田昌幸の長子であり、真田幸村の兄である真田信之の家。
 いわば徳川家にとっては怨敵の血を引く家が、幕藩体制が固まった後も命脈を保ってきたというのは、実に興味深い史実でありますが、そこに目を向けたのが本シリーズであります。

 本シリーズの敵役となるのは、関ヶ原の戦の際、秀忠ともども真田家に翻弄された恨みを忘れぬ土井大炊頭。
 前作では、武略の数々を用いて大炊頭の陰謀を、からくもくぐり抜けた真田家ですが、しかしそれで執念深い大炊頭があきらめるわけがない。そこで今回クローズアップされるのは、若くして世を去った信之の長男・真田信吉の死であります。

 四十歳というまさに壮年に亡くなった信吉。そこに不自然さを見た大炊頭は、様々な手段でそこに非を見出そうとします。
 そして話をさらにややこしく、また面白くするのは、同じ幕閣でありながら、新旧の権力を代表する大炊頭と松平伊豆守の争いがそこに絡むことでしょう。
 一つでも厄介な敵勢力が、さらにもう一つ…しかし、互いに牽制しあう二つの敵の間を巧みにすり抜ける真田家の姿が、本作の最大の見所かもしれません。

 そして、その真田家を象徴するのは、言うまでもなく真田信之その人です。
 本シリーズでは、影の主人公として登場する信之ですが、単なる策謀の人ではないのは言うまでもない話。
 今回のハイライトの一つ、江戸城中での、信之と刺客との「対決」シーンは、そうくるか!? と唸らされる見事なもので、いくさ人としての貫目というものを、はっきりと感じさせられました。

 その信之に比べると、さすがに分が悪いのが主人公たる仁木伊織ですが、しかし、本陣を守る最後の盾として、戦国最強の個人武装たる大太刀をふるう姿は今回も健在。
 出番は多くないものの――伝家の宝刀ですからしかたない――相手がどんな策を弄そうと、抜けば必ず相手を粉砕せずにはおかないというその存在感には、ただただ痺れます。


 しかし、ここ何とも(悪い方向で)驚かされるのは、本シリーズが、この第二作目で終了という事実であります。
 真田家と徳川家の暗闘という題材といい、大太刀という主人公のユニークな武器といい、無二の作品となっていただけに、これはただただ残念と言うほかありません。

 主人公が真田家の人間というのが、話を膨らませるのに難しかったのかも知れませんが、この設定で真田騒動を描いて欲しかった…というのが、愛読者として正直な気持ちです。いや、本当に勿体ない!

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