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2010.05.21

「時代小説最強!ブックガイド」 数という武器を持ったガイドブック

 相変わらず毎月毎月大変な点数の文庫書き下ろし時代小説が刊行されていることは、ここで今更言うまでもなく、書店に行けば一目瞭然ですが、ではその全貌はと言えば、これまでほとんど整理されていなかったというのが事実。
 その難事業に挑戦したのが、この「時代小説最強!ブックガイド」です。

 実に文庫書き下ろし時代小説120シリーズ――これだけでも驚くべき数字ですが、これはシリーズ数ですから延べ作品数では大変なことに!――に加え、その他過去の名作30作品を収録した本書の著者は、やはりこの人、榎本秋氏。
 これまでライトノベルや架空戦記の概説本を発表し、そして時代小説の分野においては、昨年ガイドブックとして「この文庫書き下ろし時代小説がすごい!」を発表した氏ならではの一冊であります。

 本書のメインである作品紹介ページに掲載されているデータは、あらすじ・読みどころ・著者の魅力・豆知識・著者のその他お薦めシリーズと、まずはガイドブックとしては定番の内容。
 これだけ見れば、さして珍しい内容に見えないかもしれませんが、その対象がこれまでこの手のガイドブックからほぼ漏れていた作品群であれば話は別です。
 そして、先に述べたような膨大な分量の作品数を扱っているとくれば、それだけで大きな武器となります。私もそこそこ時代小説は読んでいるつもりでしたが、まだまだこれほど知らない作品があったか、と愕然とした次第です<あんたの場合は読む本が偏り過ぎ

 冒頭に述べたように、今や一大ブームと化した感がある文庫書き下ろし時代小説。しかし、その作品が書評等で紹介されるのは、極々一部の作家――おそらくは十人にも満たない――の作品のみで、大多数については、実際に書店に足を運んで確かめるしかないのが現状。
 もちろん、いかなるジャンルも似たような状況ではありますが、しかしおそらくは読者層の関係で時代小説はネット上の書評点数が少ない、もしくは偏っている(うちのサイトみたいに)ことから、興味を持った者が気軽に情報を集めにくい状況にあります。
 そんな中で、本作の持つ価値は、言うまでもないでしょう。

 個人的には、氏の時代小説に関する前著である「この文庫書き下ろし時代小説がすごい!」のランキング(の不透明さ)にかなり不満があっただけに、順番は関係なし、とにかく一定以上のレベルにある作品をたくさん紹介して価値判断は読者に委ねよう、という本書のスタンスが、大いに気に入っています。


 もちろん、不満点が全くないわけではありません。
 作品毎に割けるスペースは小さいと言えども、もう少し切り込んだ書き方ができたのではないか、という紹介文もありましたし、氏が前著でも大プッシュしている上田秀人評も、個人的には首を傾げる点があります。

 また、過去の名作(≒非文庫書き下ろし時代小説)30作品も、作品数が少ないだけに、選択の基準に疑問が残ります。

 …といった点はあるのですが、ご覧いただければおわかりの通り、今指摘したのは、個人の感覚に依るところが大きいものばかり。ちょっと趣味が特殊な人間の徒口と思っていただいても構いません。
(ただ一言言わせていただけば、これだけ文庫書き下ろし時代小説が集まってみると、逆に、文庫書き下ろし時代小説のみに拘ることにどれだけ意味があるのか…という、本書の根幹に関わってしまう疑問が生じたのも事実ではあります)

 広大かつ実り多い文庫書き下ろし時代小説の世界に踏み込むのに、本書が良き伴侶となることは間違いないのですから…

「時代小説最強!ブックガイド」(榎本秋 NTT出版) Amazon
時代小説最強!ブックガイド


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