「生きてゐる風」 一休の強さの源
出雲街道を一人旅していた一休は、奇怪な風が吹く地で、何者かに追われる娘と出会う。娘を救おうとしたものの、土地の住民らしき者の群れに捕らわれてしまった一休は、娘ともども生け贄として「かんつま」なる地に連行される。そこで彼を待っていたおぞましき存在とは…
お馴染み「異形コレクション」の朝松室町伝奇、最新刊「憑依」に収録されているのは、ぬばたま一休シリーズの最新作「生きてゐる風」であります。
風狂の旅の途中、立ち寄った地で、奇怪な一団に追われる娘と出会った一休。多勢に無勢で捕らわれてしまった一休を待ちかまえていたものは果たして…
という展開は、邪教徒もの(という言葉があるのかしら)ホラーのパターンではありますが、本作で彼らが崇めていたのはおぞましくも恐るべき太古の存在。
かくして、邪教徒と彼らの崇めるモノを相手に、一休が大暴れを繰り広げることとなります。
そんな本作、短編であり、かつストーリー的にはかなりシンプルなこともあって、これ以上の紹介はなかなか難しい…というのが正直なところであります。
一休が対決する相手――おそらくはシリーズでも屈指の(色々な意味で)大物――の描写や、それに立ち向かう一休の「武器」のとんでもなさなど、面白い点は色々あるのですが、全てネタバレになってしまうのは残念です。
しかし、これくらいは書いて良いでしょう。
本作での一休は、巻き込まれたとはいえ、ある意味必然的な立ち位置でもって、古代の魔に対峙することとなります。
そのシチュエーション構築だけでも感心するのですが、しかし、本作の真に優れている点は、さらにそれを超えたところに、一休の強さというものを描く点でしょう。
そう、これまでの作品でも描かれてきたように、一休の強さの源は、その生まれや、武術の強さにあるのではありません。ましてや、神仏の力によるものでもありません。
彼が、妖も魔も、いや時には神や仏さえも向こうに回して大暴れする時の力の源――それは、そうした超自然的存在を、ただ一人の人間として笑い飛ばし、喧嘩すら売ってしまう、彼の強く自由な心であります。
言い換えればそれこそが一休の「風狂」なのでしょう。
本作の結末で一休が見せるある行動は、そんな朝松一休の風狂精神の表れ。
その風狂精神がある限り、一休はヒーローとして、そして我々の友人として怪異に挑み、打ち勝つことでしょう。
…本作のラストシーンから、そんなことを考えた次第です。
「生きてゐる風」(朝松健 光文社文庫「異形コレクション 憑依」所収) Amazon

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