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2010.06.28

「軒猿」第4巻 封印された過去を超えて

 長尾景虎(上杉謙信)に仕える忍び衆・軒猿の一人・旭の戦いを描く戦国アクション「軒猿」の第四巻であります。
 この巻で描かれるのは、前の巻に引き続き景虎の関東侵攻、そして旭の封印された過去の物語であります。

 関東三国志の戦乱の最中、激突する長尾景虎と北条氏康。そして北条と結びつつも、その背後で不気味な沈黙を保つ武田信玄…
 その三者に仕える忍び衆――軒猿・風魔・三ツ者――も、それぞれの主のために暗闘を繰り広げます。

 この巻の前半で描かれるのは、その関東での戦いの行方。多くの血を流し、旭たちも、その身を、心をすり減らして戦い抜いた、その結果がいかなるものであったか…
 それは、歴史が証明するところではありますが、本作の中々にユニークな景虎像――どちらかといえば寡黙で生真面目な人物というイメージのある景虎ですが、本作ではむしろ正反対の人物像なのが面白い――を通してみれば、また別の意味に見えてくるのが面白いところです。

 しかしこのままでは普通の歴史漫画になってしまうのでは…という心配も、後半で解消されます。
 そこで描かれるのは、旭と景虎の結びつきを語る物語、旭の封印された過去であります。

 常人を遙かに上回る聴力“耳疾し”の力を持つが故に、幼少時から自由を奪われ、虐待され、利用されてきた旭。
 その境遇から彼を解き放ってくれたのが景虎であり、その恩愛の情から、旭は軒猿として戦うことを決意したのですが…

 しかし、本作の冒頭では、旭はただ一人、山中で生活を送っていました。彼が景虎に救われてから、果たして何があったのか、そして何故彼がそれを忘れていたのか――それが語られるのは、景虎が修行に向かった飯綱山においてであります。

 飯綱山に潜むのは、己に苛烈な修行を課す修験者たち。しかし彼らの中には、何故か旭に強烈な敵意を向ける者たちが…
 かつて旭と彼らを襲った惨劇――そしてその引き金となったのは、一つの意外な因縁。なるほど、全てを知るはずの景虎が口を閉ざし、そして自ら救った旭を結果として野に放ったのはこういうわけであったか、と納得であります。

 自らの過去に、景虎と自分の関係をそのまま断ち切りかねない因縁の存在を知ってしまった旭ですが、しかし、軒猿での戦いが彼に与えたのは、それに押しつぶされることのない心の強さ。
 それはあるいは、軒猿という忍びにとっては無用の、いやむしろマイナスなものであるかもしれません。
 しかしそれが旭の場合には決して当てはまらないことを、我々は知っています。


 果たして旭が、己の背負った因縁をいかに乗り越えていくのか、期待しましょう。

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