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2010.06.16

「姫武将政宗伝 ぼんたん!!」第4巻 撫で斬りという陰の中に

 第三巻の時も似たようなことを書きましたが、前の巻が出てからずいぶんと待ちました。「姫武将政宗伝 ぼんたん!!」の第四巻がようやく登場です。

 伊達政宗は実は女だった、というセンセーショナルな、しかし最近では何となく珍しくないシチュエーションの本作。
 しかし、単に萌え狙いで女体化してみました、的な安直さのない、(ギャグはふんだんに含まれているものの)歴史ものとして真っ向勝負な内容が、本作の魅力であることは、言うまでもありません。

 この巻ではそれを証明するように、小手森城での大内定綱の軍に対する撫で斬り、そして政宗の父・輝宗の…と、政宗の経歴の、そして戦国史の陰とも言うべきエピソードが、描かれていきます。

 一度は伊達家の傘下に入ったものの、政宗に反旗を翻した定綱(本作ではその理由を、政宗が女性であると知ったためと設定)。 奥州一帯はおろか、伊達家家中ですら一枚岩とは到底言えない中、政宗はついに定綱の勢力下にある小手森城への撫で斬り――虐殺、いや鏖殺――を行うこととなります。

 如何に戦国時代だからといえ、それを行うなりの理由があったとはいえ、しかし現代の我々から見て、やはり撫で斬りという行為の正当化は難しいもの。
 本作ではそれをもとより正当化することなく、(ある程度のオブラートには包んでいるとはいえ)正面から描くというアプローチを選んでいます。

 それ自体、ある種好感の持てるものではありますが、しかしそれ以上に感心させられるのは、それを政宗が断行した背景に、彼女の一種女性的な感性――それもネガティヴなものではなく!――の働きを示すのがまた良い。
 しかも、それを政宗本人に語らせるのではなく、子供の頃から彼女を見守ってきたくノ一を通して語らせるというのが、実に心憎い限りです。
(もう一人、戦国時代の奥州における撫で斬りの意味と、それを行った政宗の革命性を、奥州を外部から眺める秀吉に指摘させるというのもまたうまい)

 ただ、この撫で斬り(そしてラストのあの事件)の陰に、一人の人物の悪意があった、という展開は、誰かを悪役に仕立てて、主人公の「罪」を軽くしようとする、歴史ものによくある展開に見えて残念なのですが…

 それはさておき、どれほどフォローが入ったとしても、もちろん、撫で斬りを行ったという事実は消えません。
 しかし、政宗はその重みを自ら認識し、背負う覚悟を――小十郎の「正しいやり方」という言葉を、「効率の良いやり方」と言い換えたのは、その現れでしょう――決めました。
 前途多難ではありますが、その行く道を見守りたいと思います。


 …と、まとめに入ろうかと思いきや、この巻のラストで伊達輝宗を襲うあの悲劇。
 果たしてそれを政宗はどのように受け入れ、乗り越えていくのか。物語始まって以来の重い展開ですが…さて。

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