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2010.06.24

「乙女絵巻水滸伝」 これも一つの水滸伝解釈!

 発売前から、そして発売後も色々な意味でネットを騒がせている「乙女絵巻水滸伝」が発売されました。梁山泊百八星+αのキャラクターを全員女体化したイラスト集であります。
 萌えといったものは正直苦手な私ですが、水滸伝と聞いては黙っておれず、早速手に取ったのですが…これがなかなか面白い試みです。

 武将や豪傑を、女体化――それも萌え絵系の――する流れとしては、既に主に漫画やアニメ、ゲームの世界で、戦国武将や三国志のキャラたちを対象に行われていることは、ご存じの方も多いかと思います。
 個人的にはちょっと…と思ってきましたが、ここで「水滸伝」まで女体化とは、ちょっと虚を突かれた思いでした。

 もっとも、水滸伝女体化は、かの馬琴先生の「傾城水滸伝」まで遡るまでもなく、たなかかなこの漫画「女水滸伝 がんばれ晁蓋」や、アイレムのエイプリルフール用ゲーム企画(ややこしい)「どきどきすいこでん」などがあったわけですが、それにしてもよくもまあこんなニッチな世界を…と少々感心すらしてしまった次第です。

 さて、いざ手に取った実物は、冒頭に述べたとおり、梁山泊百八星+晁蓋や王進といった梁山泊関連人物に潘金蓮ら女性陣、高キュウら四奸に方臘をはじめとする四寇ら42人、計150人人というボリューム。
 当然のことながら、全員女性として描かれているわけですが(最初から女性なキャラは男の娘になってるんではとドキドキしましたが大丈夫でした)

 まず感心したのは、このキャラクターの顔ぶれで、百八星の他はせいぜいメジャーどころ数人が収録されている程度かと思えば、単独イラスト化はかなり珍しいと思われる四寇勢も収録されているのが嬉しい。
 特に、比較的マイナー勢力である(と個人的に思っている)王慶軍も登場しているのには驚かされました。
(それだけに、「李助(りじょ)」に「りすけ」という読みがふられてしまっているのが残念…)

 この辺りは、本書がカードゲーム連動企画であり、そのために枚数(人数)が必要だったということもあるのではと想像しますが、女体化とはいえ、こうしたキャラクターに光があたるのは嬉しいことです。

 また、イラスト以外の企画記事も、あらすじや用語集、年表など、一通りのものがそろって初心者にも優しい印象。
 年表など、簡易版といいつつ、かなり細かく記載されているのに驚かされます。


 そして、肝心のイラストの方は、カードゲームで普通に行われているように、数十名のイラストレーターが担当しています。
 これだけバラエティに富んだ原典のキャラクターをビジュアライズするのに、これは一つのアプローチと言うべきでしょう。

 さて、そのイラストの内容ですが――これはやはり千差万別。
 これも冒頭に述べたように個人的に「萌え」苦手なこともあり、あどけない顔と不釣り合いなプロポーションとか、やたらに露出度の高い衣装など、「うーん…」と思わされる部分が多いのは事実です。

 しかし、そうした部分を超えて、キャラクター解釈としてなるほど! と思わされる部分が多いのもまた事実。
 女体化という大前提はありますが、原典の描写を踏まえつつ、それをデフォルメして描くことにより、そのキャラクター性をより引き出してみせるという、良きビジュアライズを達成しているものも少なくありません。

 また、どう考えても女性化は色々と苦しいだろうというキャラクター(具体的には醜郡馬宣贊と鬼臉児杜興)を、なるほど! と思わず膝を打ちたくなるような解釈で描いているものもあり、なかなか楽しいのです。


 考えてみれば、原典のある要素を取り出して、より極端な形でビジュアル化、キャラクター化をしてみせるのは、女体化に限ったことではありません。例えば昨今の戦国武将のイケメンキャラ化も、同様の流れと言えるでしょう。
(さらに遡れば、そうした現代に伝わる武将や豪傑像自体、これまでの大衆文化の歴史の中でキャラクター化された部分が大変多いのですから…)

 そう考えると、一つの水滸伝解釈として、これはこれで、大いに面白い試みであり、水滸伝ファンとして評価したいと、素直に感じます。
 先に述べたように企画ページの充実もあり、本書は結構真面目に「水滸伝」という作品を、若い層に広げようとしているのでは…とも感じた次第です。


 ――と、ネット上からはすぐ消えてしまいましたが、何やらトラブルがあった様子。確かに、花栄の妹の名前って原典になかったような? とは思いましたが…水滸伝ファンとして、双方にとって良い結果に向かうよう祈っております。

「乙女絵巻水滸伝」(乙女絵巻製作委員会 ハーヴェスト出版) Amazon
乙女絵巻『水滸伝』

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