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2010.06.17

「燃える川 爺いとひよこの捕物帳」 青年の成長と幕府の転覆と

 伝説の忍び・和五郎に助けられながら成長していく新米下っ引き・喬太の姿を描く、「爺いとひよこの捕物帖」の、待望の第三弾が登場であります。
 今回も、和五郎のアドバイスで怪事件に挑む喬太ですが、彼ら二人の運命を変えかねない大事件がこの巻では発生いたします。

 江戸を襲った大火で死んだと思われていた喬太の父・源太。実は生き延びていた源太は、その銃の腕前から強引に将軍暗殺を狙う一味に引き込まれ、心ならずも狙撃の場に向かい、将軍に銃口を向けることに…というのが前作のラストでした。

 ここで終わるなんて! と驚かされたこの場面から一年(長かった!)、このシリーズ第三巻の冒頭で、将軍警護についていた和五郎らの働きで、陰謀は失敗、源太も、結局は銃を撃たずにすんだのですが、しかし一味の奸計は、彼を下手人に仕立てあげ…と、結局彼は追われる身になるのでした。
 果たして彼の運命は、そして幕府転覆を狙う一味の次なる陰謀は…

 と、この幕府転覆を狙う企みと、追われる源太の姿を縦糸として、そして喬太が挑む事件の数々を横糸として、本書は構成されています。
 このスタイルは風野作品としてはお馴染みのもの。そういう意味では新味はあまりないかもしれませんが、しかし、本シリーズのタイトルともなっている「爺い」と「ひよこ」のコンビは、三巻目になっても、新鮮で面白いのです。

 毎回、不可能犯罪や事件とも言えないような珍事に巻き込まれた喬太が、己の足と勘を頼りに操作した手がかりを、和五郎がいながらにして推理する――
 そんな、一種安楽椅子探偵的趣に加えて、和五郎が全て解決してしまうのではなく、そこからひとひねり加えて喬太が推理してみせるという二人の立ち位置の妙が、心地よいテンポを生んでいます。

 思えば、風野先生は、デビュー当初から、老人や弱者の逆襲、ともいうべき内容の作品を多く描いてきました。。
 もちろん、老人だからといって、世間からリタイアしたままでは終わらない、弱者だからといって、弱いままでは終わらない――
 そんな彼らが、歴史の陰で自分たちの意地を見せるところに、ドラマとしての楽しさ、カタルシスがあるのですが、本シリーズは、爺い(老人)とひよこ(弱者)という両極端の二人を主人公にすることにより、その魅力を最大限に引き出していると感じます。

 ちなみに本シリーズ、喬太へのアドバイスの際に和五郎が語る過去話もまた、楽しみの一つ。かつては家康の近くに使えたほどの伝説の忍びである和五郎ならではの、含蓄と意外性に富んだエピソードも、よいアクセントとなっています(特に今回は、和五郎と家康の目に映る石田三成像が実に興味深い)。
 そうかと思えば和五郎爺さん、とんだやんちゃを毎回やらかすところも実にいいのですが…

 そんな和五郎に比べると、さすがに喬太の方はまだまだといったところで、毎回毎回、和五郎の元に助言を請いに行ってしまうのには歯がゆさも感じます。
 もっとも、本書のラストの事件では、ある理由で和五郎も、自分の親分である岡っ引きも不在の状態から、見事に容疑者を追い詰め、しっかりとした成長の証を見せてくれるのも、シリーズ当初から読んでいる身としては、何とも嬉しく感じられることです。


 …が、好事魔多し、と言うべきでしょうか。その「ある理由」――潜伏していた源太が役人たちに見つかったこと――が、彼の運命を大きく動かすことになります。

 青年の小さな成長を描く物語は、思わぬところから幕府転覆を巡る巨大な陰謀に結びつき――その中で喬太は、和五郎はどのような役割を果たすことになるのか?
 老人と弱者の大活躍を期待すると同時に、次は一年間は待たせないで欲しいと切に願う次第です。

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