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2010.06.18

「太夫の夢 風の忍び六代目小太郎」 風の上忍vs水の怪忍

 十兵衛の回復祝いで吉原を訪れた風間伊織は、風巻太夫に無体を働く河内屋を叩き出す。逆恨みした河内屋は、凄腕の殺し屋・<節季流れ>の徳蔵と獣王に伊織と風巻を殺害を依頼。湯殿忍法最後の生き残りの徳蔵が操る奇怪な忍法は、伊織を、吉原を追い込んでいく。獣王の毒牙にかかった伊織を救う者は…

 江戸を密かに守護する風間伊織こと六代目風魔小太郎と風魔忍者たちが、戦国生き残りの怪忍者たちと激突する「風の忍び 六代目小太郎」シリーズ、待望の最新巻であります。

 今回の舞台となるのは、華の吉原。本シリーズにおいては、江戸風魔の一方の拠点(もう一方は鳶沢町の古着屋街)となる吉原において、大胆不敵にも吉原の太夫、そして伊織を襲う怪忍者の魔手が描かれます。

 前作で重傷を負いながらも、復活した柳生十兵衛の快気祝いで、客として吉原を訪れることとなった伊織。
 そこで偶然、吉原で一、二を争う太夫・風巻に、新興商人の河内屋が野暮な無体を働こうとしているのを見た伊織は、河内屋を叩き出すのですが――これが事件の始まり。

 実は裏の顔では吉原の乗っ取りを狙っていた河内屋は、己に恥をかかせた風巻と伊織を抹殺するために、<節季流れ>の徳蔵と、相棒の獣王という凄腕の殺し屋を呼び、かくて吉原を舞台に、忍者同士の死闘が繰り広げられることとなります。

 毎回登場する敵忍者の奇怪な能力が魅力の一つである本作ですが、今回登場する徳蔵と獣王は、これまでシリーズに登場した中でも屈指の強敵です。
 湯殿忍びの最後の生き残り・徳蔵は、水・水分を自在に操り、己の体組織すら変貌させる忍法の遣い手、そしてその相棒・獣王は神出鬼没の魔犬――周囲の犬を自分の分身のように操り、ついに吉原を封鎖するという快挙(?)を成し遂げた怪物であります。
(ちなみに、何故湯殿忍びが水を操る忍法を極めたかというロジックや、獣王の壮絶な出自など、実にオリジナリティがあって良いのです)

 この一人と一匹の猛攻には、さしもの伊織も手を焼き、ついには、獣王の操る想毒――相手を狂気に追いやる猛毒から身を守るために、己の心を閉ざすほかなくなります。

 と、そこで伊織を救い出すのは、風魔の中でも特異な術を操る風巻太夫の役割。
 ここではその詳細には触れませんが、一見ベタに見えるシチュエーションながら、その中で風巻の運命が語られ、そして彼女の背負ってきたものの、そして本作のタイトルである「太夫の夢」の、その重みが明らかになるという構成は、実によくできていると感じます。
(そしてまた、風巻と、敵方で実は設定的に対になっているのがまたうまい)

 唯一残念に感じられたのは、河内屋があまりに小物すぎる点ですが、ここは、その小物に徳蔵ほどの者が使われなければならない、という悲しさを読みとるべきでしょう。


 忍者もの――それも単なる隠密ではなく、人外の忍法を操る者が登場する小説がほとんど絶滅しかかっている中、そのような忍者たちを縦横無尽に活躍させる本シリーズ。
 伊織たちのキャラクター描写もノリに乗っていることでもあり、これからも、彼ら忍者たちの活躍を見せていただきたいものです。
(しかし、そのような忍者たちが、作中世界ではほとんど滅びかけていることを思えば、一種メタな繋がりを感じなくもないのですが…)


 と、次の巻の予告では何と…これほど次の巻が楽しみなシリーズは久しぶりであります。

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