「童の草」第1巻 生意気お子様幸村伝
真田家忍頭・猿飛佐助に課せられた任務。それは主君の幼き息子・真田幸村を警護することだった。しかし、佐助を玩具と呼び、振り回す幸村のわがままぶりに、佐助の怒りも爆発寸前。しかし、そんな幸村の心の奥底にあるものに気付いた佐助は…
ガンガン系歴史・時代漫画紹介シリーズその3。
童――少年時代の真田幸村と、草――猿飛佐助をはじめとする十勇士の一風変わった交流を描くユニークな幸村&十勇士伝であります。
最近の歴史ブームでは、政宗と並ぶ人気を誇る真田幸村。今までこのブログでも取り上げてきたように、彼と、その頼もしき真田十勇士を描いた作品も、それこそ無数にあります。
…が、本作はその中でも特にユニークな部類の作品。
なぜなら、本作の幸村はまだほんのお子様、子供らしい傍若無人さで周囲を振り回す、はた迷惑な存在なのですから…
そんな幸村のお守をする羽目になったのは、剽悍な真田忍の頭領・猿飛佐助。役目柄とはいえ、そんな彼が、ナマイキなお子様に膝を屈するのは屈辱以外の何ものでもなく、その怒りが爆発する日が来るのですが――
と、もちろんこれで幸村が単なるクソガキで、佐助が単なる短気な忍者であってはお話にならないわけで、そこでちょっとイイ話的に二人は固い主従の絆で結ばれるようになるわけであります。
本作は、そんな調子で次々と配下を増やしていく魔性のお子様の物語…と表しても当たらずとも遠からずのお話。
もちろん、幸村と佐助がこの調子であるからして、他の十勇士もいずれも一癖も二癖もある連中であります。
この第一巻に登場しただけでも、やたら脳天気ながら凄腕の暗殺者の霧隠才蔵、天狗様の存在を信じるピュアな孤児兄弟の三好清海&伊佐、恐ろしい姿に優しい心の老海賊・根津甚八、愛に独特の拘りを持つ超美形の琵琶法師・海野六郎と、本当によそではお目にかかれない連中ばかり。
そんなくせ者たちの心を、次々と幸村がゲットしていく姿を見ると、無邪気の力というものを考えさせられます。
さて、本作の魅力は、そのキャラクターやストーリー展開のみではありません。
作者の過剰に装飾的であるようでいて、どこか荒っぽさを感じさせる絵柄は、他の何にも増して、本作を唯一無二の作品として、印象づけてくれるのです。
初めて作者の絵を(本作の第一話で)目にした時には、ずいぶんクセのある絵だな…と思いつつ、きっちり動きを見せてくれる――つまり、単なるコマ割りをしたイラストではない、一個の漫画として成立している――のに感心したのですが、その印象は、一冊通して読んでも変わりません。
好き嫌いは大きく分かれるかもしれませんが、これは捨てがたい才能と言うべきでしょう。
本作のラストに収録されたおまけページでは、十年後の幸村と十勇士の姿が描かれ、その中にはこの第一巻にもまだ登場しない面子が含まれているのですが、こちらもどうみても食わせ物揃い。
現在は連載休止ということですが、再開が楽しみであります。
ちなみに作者は、伊達政宗を主人公にした「伊達人間」(凄まじいタイトル…)を並行して連載中ですが、これが無茶苦茶なテンションの一作で、こちらの単行本化も今から楽しみにしているところです。
「童の草」(宮永龍 スクウェア・エニックスガンガンコミックスIXA) Amazon

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