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2010.08.15

「怪異いかさま博覧亭」第5巻 博覧亭、これで見納め!?

 妖怪馬鹿の青年・榊が経営する見世物小屋・博覧亭を舞台に両国で繰り広げられる、お江戸ドタバタ人情コメディ活劇(?)「怪異いかさま博覧亭」もこれでひとまずの見納め。最終巻第五巻が発売されました。

 当時の地球上最大の都市の、最大の繁華街・両国。そこに掛かった妖怪専門の見世物小屋・博覧亭に集まった、人間妖怪付喪神、入り乱れての大騒動を描いてきた本作。
 切れ味・テンポの良いギャグに嫌味のない魅力的なキャラクター、散りばめられたお江戸のうんちく、どこか呑気で暖かいストーリー展開と、ほとんど私好みの要素だけで構成されたような作品だけに、ここでひとまず幕というのは、残念というほかありません。

 もっとも、これで最終巻だからといって、ことさらよそゆきの内容にならないのがいかにも本作らしいところ。
 もともとが一話完結のギャグ漫画だけあって、基本的にラスト近くまでは通常営業であります。

 この第五巻でまず目を引くのは、冒頭に収められた、悪徳見世物小屋に売られた二口女の少女を巡る大勝負でしょう。

 突然頭の後ろにもう一つの口が生まれたばかりに見世物にされた彼女とその恋人を救うため、榊と仲間たちが挑んだのは、なんと大食い勝負。
 元々二口女は「食べること」「食欲」と繋がりを持って語られる妖怪。その二口女を相手に大食い勝負とは、無謀もいいところですが、もちろん妖怪馬鹿の榊がそれを知らないわけがありません。

 妖怪知識+海千山千の強者らしい「いかさま」で少女の苦境を救う展開は痛快そのもの、その後の対処の鮮やかさも相まって、いかにも本作らしいエピソードであります。


 そしてもう一つ強く印象に残るのは、ラスト三話に渡って描かれる、本作ではたぶん初の連続エピソード。
 が、その内容が両国を挙げての一大鬼ごっこ…と聞いたときには首を傾げましたが、この追いかける相手が本物の鬼というのであれば話は別でしょう。

 昔々、悪行の果てに高僧に捕らえられ、もろともに仏像に封じられた天邪鬼――
 その鬼を解き放って、江戸の朱引から外に逃れられれば鬼の勝ち、その前に鬼に蹴りを入れられれば参加者の勝ちという、いささか鬼ごっこというには逆転したルールではありますが、そこに賞金が絡めば、四の五の言う者はおりません。
 かくて、ほとんどオールスターキャストでの鬼ごっこ、と相成ります。
(それにしても、少年時代の榊が参加した前回の鬼ごっこの時点では朱引はなかったということは、本作は文政年間のお話ということになりますね。意外なところで年代がわかったな…)

 それにしても、いくら逃げ切れば自由の身になれるとはいえ、これでは鬼にちょっと酷な話。そして何よりも、わざわざ鬼ごっこのために鬼を一時的とはいえ解放するというのも…
 と思えば、結末に明かされるのは、意外で、しかし微笑ましくも馬鹿馬鹿しい真の目的。この辺りのひっくり返し方も、いかにも本作らしいや…
 と思わされる一方で、高僧の言葉から、榊が密かに行ってきた、両国を人とあやかしが共存できる一種のアジール化の試みが、しっかりと根付いたことを確認させるという展開が何とも秀逸で唸らされた次第。

 単に話の規模のみならず、その中に流れる精神の点からも、本作のひとまずの締めくくりにはふさわしいエピソードであります。


 さて、冒頭から述べてきた通り、本作はこの第五巻でひとまずの幕となります。
 しかしこれは、冒頭からしつこく「ひとまず」という言葉を使ってきたように、これで榊たちとのお別れということを意味しません。

 実はこの後、本作は掲載媒体をこの冬に創刊される電子コミック誌「電撃コミックジャパン」に移して再開されるとのこと。
 つまり本当にこれはひとまずのお別れ、あと少し待てば、再び博覧亭は見世開きすることになります。

 その日が少しでも早く来ることを祈りつつ、それまではこれまでの五冊の単行本を読み返すとしましょう。

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コメント

これで終わり・・・とコミックス購入ONLYの私は少しメゲておりましたが、こちらのブログ読んで安心しました。電撃系に行くとするとアニメ化もありますかね? でも、その場合は付喪神ズが嫌がるダンスをエンディングで踊らされそうな気がします(笑)。

投稿: ジャラル | 2010.08.21 00:57

そうか、そういう可能性もありましたね!

真面目な話、ちゃんと宣伝すればかなり売れる内容だと思うので、そちらの展開も期待したいところです。

とりあえず、付喪神の商品化はぜひお願いしたいところですね。

投稿: 三田主水 | 2010.09.12 18:58

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