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2010.08.28

「射雕英雄伝EAGLET」第4巻 彼自身の積み上げた強さ!

 相変わらず金庸らしさはほとんどないのにそれでも何故か面白い「射雕英雄伝EAGLET」第四巻が刊行されました。
 第二巻から続いてきた武術大会・江南論剣も、ついにこの巻で決着がつくことになります。

 洪七公による驚異の睡眠学習法・睡功により、付け焼き刃とはいえ驚異的な内功を得た郭靖。
 この力でついに決勝にまで進出した郭靖ですが、しかし、一日やそこらで得た力が通用するのには限界があります。

 準決勝第二回戦で完顔康と対決するも、力及ばず敗れ、あわや九陰白骨爪の餌食となりかけた黄蓉を救うために内功を使い果たした郭靖は、これまでのダメージも一気に吹き出し、もはや立っているのがやっとの有様に…

 それでも戦う意志を捨てない郭靖の前に現れたのは、なんと西毒・欧陽鋒!
 宿敵である北丐・洪七公が何故か入れ込む郭靖に興味を持った欧陽鋒は、郭靖に、自分であれば点穴により、通常を遙かに上回る力を五回出すことができるようになると誘いかけます。

 この誘いに乗り、欧陽鋒言うところの「五発の大砲」を手にして完顔康との決勝戦に臨む郭靖ですが――ここからが今回の面白いところであります。

 確かに瞬間的にすさまじい力を出すことを可能とするこの法。
 しかし「五発の大砲」の代償は、使用する者の五感――すなわち、一度力を解放する毎に、視・聴・嗅・味・触の五つの感覚が、一つずつ失われていくこととなるのです。
 たとえ超絶の力を発揮しようとも、五感が失われていく状態でそれを活かすことは難しい。しかも、放てば放つほど、感覚が失われ、不利になっていくとあれば…

 なるほど、欧陽鋒が郭靖に助け船を出し、郭靖がそれに乗ってしまった時は「?」と思いましたが、これはいかにも欧陽鋒らしいやり口と言っていいでしょう。

 しかし、このいわば借り物の力で戦う郭靖が、ここで彼自身の強さを見せるという展開が心憎い。
 そう、力は借り物であっても、己の感覚を失いゆく中で決してあきらめずに戦いを続け、、放つべく時に得た力を放つのは、紛れもない彼自身が積み上げてきた、彼自身の強さであります。

 郭靖は原作でも天才とはおよそほど遠い、努力型の主人公でしたが、その彼の特徴を、こうした形で示してくるとは…いや、やっぱりこの漫画は油断できません。

 前の巻で明かされた郭靖と完顔康の因縁が、それほどお話に影響してこなかったのはちょっと残念ですが、相変わらず達者なアクション設計もあり、十分に楽しませていただきました。


 そして江南論剣に決着がついても、まだまだ郭靖の旅は続きます。

 金に協力する欧陽鋒の琴に込められた内功により、わずか数刻後には己の意志を失ってしまうことになった洪七公(もはや何でもありだな…)。
 彼は、己を止めさせるため、残る時間で郭靖に降龍十八掌を全て伝授しようとするのですが――さて、郭靖は降龍十八掌を会得することができるのか、そして洪七公を止めることができるのか。

 やはり目が離せないもう一つの「射雕英雄伝」であります。

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