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2010.08.08

「Ninja Attack !」 日本語でも読みたい忍者常識マニュアル

 最近は忍者解説本がひそかに何冊も刊行されていますが、そのある意味決定版が登場しました。それも、海の向こうから。
 知る人ぞ知る「YOKAI ATTACK!」の作者コンビである依田寛子とアルト・マットが、時代劇アジテーター・近藤ゆたか先生をイラストレーターに迎えて送る好著であります。

 本書"Ninja Attack !: True Tales of Assassins, Samurai, and Outlaws"の本書の章立ては、以下の通りとなっています。
NINJA'S NINJA
NINJA GONE BAD
NINJA MAGIC
NINJA RIVALS
NINJA USERS
NINJA DESTROYER

 大雑把に訳せば、それぞれ「忍者の中の忍者」「悪に染まった忍者」「妖術幻術と忍者」「忍者の好敵手」「忍者を操る者」「忍者を滅ぼすもの」と言ったところでしょうか。
 本書は、この各章において、関連の人物を一人一人紹介していくスタイルをとっています。その数、約三十…決して類書に比べて多いわけではありませんが、しかし一人当たりの紹介が、色々な意味で実に濃いのです(巻頭から望月出雲守、戸隠大助、日野阿新丸の三連発ですからね…)。

 その本書の濃さの由来の一つであり、そして本書の最大の魅力となっているのが、近藤ゆたか先生によるイラストであります。
 「蔵出し絶品TV時代劇」の編著から、傑作時代伝奇漫画「大江戸超神秘帖 剛神」の作画、アニメ「大江戸ロケット」の時代考証等、時代劇アジテーターとして八面六臂の活躍を見せる氏ですが、これだけまとまった形で、カラーイラストを見ることができるのは珍しい。

 本書に登場する忍者約三十人に付されたイラストは、いずれも力作と呼ぶにふさわしいものばかり。
 わずか一枚のイラストで、その人物の特徴や人となり、位置づけetc.を示す――それも、それなりのリアリティを維持しつつ――というのは本当に困難であったかと思いますが、しかし本書で氏は、それを見事にやり遂げていると断言できます。


 もちろん、依田寛子とマット・アルトの両氏による解説も充実していることは言うまでもありません。
 ちょっとゲームの能力値風に記載された各キャラクターの関連データもわかりやすいのですが、本文の、彼ら一人一人を掘り下げての解説文がなかなかの充実ぶりなのです。

 何よりも私が本書を気に入っているのは理、本書の記載が、単なるキャラクター紹介や無味乾燥な史実の抜き書きに終わらず、彼ら忍者と関係者たちにまつわる伝説や巷説、さらには後世の漫画等に至るまでをピックアップしていることでしょう。

 いささか大げさに言えば、本書に記載されているのは、文化としての忍者――忍者自身の事績のみならず、彼らが後世へどのような影響を与え、どのように解釈・受容されていったか、その姿であります。


 もちろん、記載されている情報量やその深度においては、本書を上回るものが、日本では刊行されているでしょう。
 しかし、忍者の本場である我が国であらばこそ、逆に気づかない視点を、本書は外部の立場であらばこそ、教えてくれるように感じるのです。
 この内容、外国人だけのものにしておくには勿体ない…これが私の正直な気持ちであります。


「Ninja Attack !: True Tales of Assassins, Samurai, and Outlaws」(依田寛子&アルト・マット&近藤ゆたか )Amazon
(英文版) 外国人のための忍者常識マニュアル - Ninja Attack !: True Tales of Assassins, Samurai, and Outlaws

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