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2010.08.21

「平安ぱいれーつ 東国神起」 史実通りに、しかし…

 将門の乱に便乗して凶暴化した海賊が西国に流れてくることを憂う純友は、山吹丸と小頭四天王を連れ、東国に向かう。その途上、不思議な魔力を感じて立ち寄った相馬で彼らを待ち受けていたのは、将門の腹心・興与王だった。しかし彼には、思わぬ強力な力が後ろ盾となっていて!?

 藤原純友に仕える(見かけは)少年・山吹丸と、一人一人が特異な力を持つ半妖の小頭四天王が繰り広げるドタバタを描いた「平安ぱいれーつ」シリーズも、この第三弾で残念ながら完結であります。

 異国から来た心優しき狼男・黒金、竜宮城の乙姫と人間の間に生まれた青鷺、正体は超有名人の異国の魔術師・真朱、人間の女性の魂を持つ護法童子・白露…
 生まれも育ちも種族も違う四天王、共通するのは純友への忠誠心と、山吹丸ラヴ(山吹丸は半妖にものすごく好かれやすい体質なのであります)である点のみという、あまりに個性的すぎる面子ともこれでお別れというのも、何とも寂しいお話です。

 しかしもちろん、お話の方は寂しいと感じる暇もなかなかない大騒動。
 本書に収められた中編二本とその間の短編一本のエピソードを、彼らは一気に駆け抜けていきます。

 表題作の「東国神起」は、これまで幾度か背景として語られてきた平将門にまつわる物語。
 本人は叛乱の意図など全くなく、マイペースで暮らす純友たちにとって、勝手に乱を起こして、いつの間にか共犯のような扱いになっている将門は大いに迷惑。彼らと話し合うために東国に向かった一行は、相馬の古御所で滝夜叉、その正体はなんと阿修羅王と対決する羽目となってしまうのでした。

 偽物でも何でもなく、本物の阿修羅王を向こうに回して、四天王も大苦戦。ほとんど総力戦の果てに、事態は意外な結末を迎えることになります。

 実のところ、阿修羅王が登場する理由は(それなりの説明はあるものの)薄いですし、将門の扱いがあまりに小さいのもちょっと残念なのですが、しかし阿修羅王との戦いの描写はさすが、と言うべき迫力。
 特に、阿修羅王の法力と真朱の魔力、東西の全く異なる体系の術と力のぶつかり合いをきっちり描いてみせるのは、これは昔から変わらぬ作者の腕の冴え、と言うべきでしょう。

 そして、インターミッションというべき短編を挟んで、ラストの「海之彼方」は、いよいよ純友たちが官軍に追い詰められていく姿が描かれます。

 シリーズ開始当初から心配していたことですが、言うまでもなく、一度は将門と並び世を騒がした純友の叛乱は、朝廷によって鎮圧され、純友は命を落とすというのが史実に伝えられているところ。
 一体その辺り、史実とどのように折り合いをつけるのか、純友の、山吹丸の、四天王の運命の行く先は…と、読者は皆ハラハラしていたかと思います。

 さて、本作で描かれるのは、あくまでも史実通りの展開。
 朝廷の追捕使に追われた末に太宰府に向かった純友は博多湾の戦いで敗れ、本拠である伊予に逃れるも、そこでの戦いの果てに…
 と、過程のデコレーション――伊予での、賀茂忠行(たぶん美形)操る朱雀と、真朱の激突がまた盛り上がる!――はあるものの、やはり史実というのは曲げられないのか? と思いきや、やっぱりやってくれました。

 詳しくは読んでのお楽しみですが、ここで山吹丸と四天王が打った、文字通り起死回生の一手は、まさに本シリーズの総決算と言うべきもの。
 山吹丸の心と四天王の力、そして大事な大事な山吹丸のアレも合わさってのクライマックスの展開は、なるほどあの要素がこう繋がるか、と納得&驚きの展開(特に白露の扱いがうまい)であります。

 史実は史実として尊重しつつも、その背後に波瀾万丈の活劇をちりばめ、そしてラストはもちろんハッピーエンド――いうことなしの結末でした。


 そして、最後の最後に再び合法ショタとは…やはり如月先生には端倪すべからざるものがありますね。

「平安ぱいれーつ 東国神起」(如月天音 新書館ウィングス文庫) Amazon
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