« 「平安ぱいれーつ 東国神起」 史実通りに、しかし… | トップページ | 「あやかしがたり 2」 そして彼が歩む道 »

2010.08.22

「狐隠れの君」 潔い時代アクションロマンス

 幕府の役人の陰謀により藩を乗っ取られ、弟共々追われる身となった蓮華姫。彼女が頼ったのは、藩の忍者集団・真鍋蛇の一人であり、幼なじみである如月丸だった。藩奪還を目指す蓮華は、如月丸と共に隠れ潜み、遺臣たちと共に蜂起の時を窺うが、敵は一枚上手だった。一人城に捕らわれた蓮華の決断は…

 おそらくは江戸時代初期を舞台に、亡国の姫君と、彼女を守る忍者の活躍を描く時代アクションロマンスであります。

 豊富な銀鉱で知られながらも、それがために悪人に目を付けられた真鍋藩。藩主である父は罠にはめられて命を失い、主人公である蓮華姫は、まだ幼い弟と二人、着の身着のままで逃げ出すことになります。

 彼女が頼ったのは、かつて真鍋藩が誇った忍び・真鍋蛇の最後の生き残りであり、幼い頃に自分の側に仕えたいわば幼なじみの如月丸。
 ある事件がきっかけで藩を離れ、山中で一人暮らす如月丸と久々に出会った蓮華ですが、如月丸は姫を姫とも思わぬ態度で…まあ、蓮華の方も姫とは思えぬ荒くれぶりなのですが。

 それはさておき、久々に出会った(イケメンの)幼なじみ、姫に忠実に(?)仕えるナイト、喧嘩してばかりいるけど実は…な二人というのは、いずれも定番パターン。しかし、それを全て盛り込んでみせたのは、ある意味潔いお話。敵方の企みが少々無理があることに目をつぶれば、なかなか楽しい漫画であります。

 何よりも、如月丸の力を必要としつつも、それでもなお、彼を縛るまいとけなげに振る舞う蓮華のキャラクターがよろしい。
 如月丸の属した真鍋蛇は、戦国時代は真鍋家を支えて大活躍した忍者集団ですが、平和な時代になれば無用の長物。いや、それどころではなく、各藩が独自の忍びを持つことを忌む幕府に目を付けられた末に、藩の手で真鍋蛇は全員誅戮されたという過去が実はあります。

 幼い蓮華の懇願で命を救われ、一族の菩提を弔うという名目で、唯一山に放たれた如月丸にとっては、真鍋藩のために戦う義理などありません。
 それを蓮華も痛いほどわかっているからこそ、自分と弟を匿ってもらう以上のことを彼に求めず、彼が自由な生き方をすることを望むのですが…まあ、それでヒロインを見捨ててどこかに行くようでは、ヒーローではありませんわな。

 クライマックスの大乱戦は、あっと驚くどんでん返しもあって、これ以上はないハッピーエンド。
 ご都合主義と言えば言え、こういう結末が必要不可欠な物語もあるのだ…と、私は心から思った次第です。


 ちなみに本書には、農民として育てられながら、実は徳川家斉の隠し子だったヒロインを主人公とした「花始華」も収録されているのですが――

 これが、時代考証には拘らない私もちょっと呆気にとられた作品。戦国時代、せめてこちらも徳川時代初期を舞台にすればよかったのに…とのみ申し上げます。

「狐隠れの君」(山田圭子 秋田書店プリンセスコミックス) Amazon
狐隠れの君 (プリンセスコミックス)

|

« 「平安ぱいれーつ 東国神起」 史実通りに、しかし… | トップページ | 「あやかしがたり 2」 そして彼が歩む道 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/49222529

この記事へのトラックバック一覧です: 「狐隠れの君」 潔い時代アクションロマンス:

« 「平安ぱいれーつ 東国神起」 史実通りに、しかし… | トップページ | 「あやかしがたり 2」 そして彼が歩む道 »