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2010.08.16

「石田三成 ソクチョンサムスン」 二つの時代、二つの欠点

 文禄の役の最中、石田三成は千年前の遺跡を開放、古代百済の魔力を己のものとする。百済復興をもくろむ三成に挑むのは、歴史の陰で百済党と戦ってきた柳生の剣士。そして百済を巡る柳生の戦いは、数百年前にも行われていた。時空を越えて、日本の運命を左右する二つの東西の激突が繰り広げられる…

 荒山徹先生の問題作、「柳生大作戦」改め「石田三成 ソクチョンサムスン」が単行本化されました。

 タイトル通り、物語の(一方の)中心となるのは、石田三成その人。
 実は歴史の陰に潜み、千年以上前に滅んだ百済の復興を目論んできた近江百済党の党首だった三成。
 己の目的を果たすため秀吉に接近し、文禄の役で渡った朝鮮で、古代百済王の残した百済復興の魔力を手に入れた三成は、その魔力で次々と邪魔者を滅ぼし、日本を自らの掌中に収めようと暗躍します。

 その陰謀に立ち向かうのが、歴史の陰で百済党と戦ってきた柳生一族。その俊英たる柳生宗矩は、魔人と化した三成を倒すため、徳川家康に接近していくことになります。

 そして、本作の最大の特徴は、この柳生の戦い、百済復興を巡る暗闘が、平行してもう一つ描かれることであります。

 それが、戦国時代から約千年遡った、天智天皇の御代に繰り広げられた戦いです。
 亡命百済人を広く受け入れた天智天皇とその庶子・伊賀皇子は、百済復興のための国策を次々と邁進。それに危機感を感じた天智天皇の弟である大海人皇子と、その腹心・柳生崇矩は、その野望阻止に立ち上がります。

 実は柳生一族こそ、天日槍、そして田道間守ら新羅人の血を引き、その異能をもって百済と戦ってきた一族。
 天智天皇と伊賀皇子が百済復興を画策していることを知った崇矩は、それを阻止しうる存在として大海人皇子に力を貸すこととしたのです。

 かくて、飛鳥時代と戦国時代、二つの時代の間で目まぐるしく視点を変えながら、柳生と百済の死闘が描かれていくこととなります。そしてその二つの時代でキーアイテムとなるのが、恐るべき力を持つ百済の神器・指南亀。大戦の行方を左右するこの神器を巡り、剣士と陰陽師、剣士と怪獣、怪獣と怪獣が縦横無尽に入り乱れる物語が展開されることになるのです。


 ――が、それが面白いかというと、これがまことに残念ながら、Yesとは言い難いというのが正直なところであります。

 中盤までは、壬申の乱に向かっていく歴史の流れを朝鮮との関係から捉え直そうというダイナミックな視点、そしてそれが千年の時を隔てて繰り広げられる家康と三成の対立にオーバーラップしていく様を興味深く読むことができたのですが…

 好きな作家のこういう点を述べるのは好きではないのですが、荒山作品では、時として二種類の欠点が顔を出すことがあります。
 一つは、歴史の流れを詳述することに力を入れるあまり、物語の大半がそれで埋め尽くされる点。
 そしてもう一つは、その時点で作者が興味を向けた(と思われる)ネタに、物語全体がシフトしていってしまう点であります。

 これまでどちらか一方が表れるに留まっていたこの二つの欠点が、同時に出てしまった…本作は、そんな印象があります。

 後半、飛鳥パートでは伊賀皇子と大海人皇子の壬申の乱に至る争いが歴史書を見るように羅列され――一方、戦国パートでは何故か、指南亀を手に入れるために飛鳥時代に時間跳躍することを志した柳生宗章の苦闘記が延々と続く(特に前半のヒーローたる宗矩が全く姿を消してしまうのには愕然)。

 一体この物語はどこを目指しているのだろう? と不安になってきたところで、ほとんど短編もののオチのような形でばっさりと物語が幕を下ろしてしまうに至り、さて、本作をなんと評すべきか…と悩んでしまうのです。

 先に述べたように、視点・構成は実に独創的であり、特に壬申の乱をこれまでにない角度から描いた点は大いに評価できるのですが――
 「柳生大作戦」というタイトル予告に胸躍らしていた時のことを思うと、何とはなしに物悲しい想いになるのであります。

「石田三成 ソクチョンサムスン」(荒山徹 講談社) Amazon
石田三成 ソクチョンサムスン


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