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2010.09.20

「もののけ草紙」第3巻 戦争という悪夢の中で

 「夢幻紳士 逢魔篇」のスピンオフ、女芸人「手の目」を主人公とした連作シリーズ「もののけ草紙」の第三巻が発売されました。 掲載誌が休刊となった回までが収録されている本書、今回も前巻同様、第二次大戦直後の日本を舞台とした物語が展開されていきます。

 大陸で強引に弟子入りしてきた少女・小兎を弟子に放浪を続ける「手の目」。第二巻後半で日本に帰ってきた彼女たちを待っていたのは、敗戦し、焼け野原になった日本で――
 という基本設定こそあるものの、お話的には短編連作ということで自由に展開していきます。

 もちろん手の目は芸人でありますからして、お座敷がかかればそこに顔を出すのですが、一部の戦争成金を除けば、今の(その当時の)日本にお座敷がそうそうあるわけがない。
 …と思えば、思いもかけない、そしていかにも本作らしいお座敷に顔を出すことになったりもするのですが、いずれにせよ、手の目と小兎は、焼け野原となった日本をあてどもなく放浪し、様々な怪異と出会うことになります。

 そんなバラエティに富んだ短編たちを収めた本書ではありますが、しかし一つだけ共通することは、それらの物語が――直接的にせよ間接的にせよ――戦争という存在を、その背景に置いて展開されることであります。

 戦地で、いや本土においても無数の人々が命を落とし、生き残った者も心身に傷を負った世界…
 そこで彼女たちが出会う怪異は、あるものは戦争で死んだ者の亡霊であり、焼け野原を彷徨う妖魔であり、平和だった時代の記憶であり――それに対して手の目が担う役割は、ある意味必然的に、単なるゴーストハンターのそれではなく、むしろ巫女的なそれに近づくことになります。

 一歩間違えると女性版夢幻紳士にもなりかねない彼女の存在が、明確に差別化されているのは、その怪異に対する立ち位置の点において、と言えるでしょう。


 冒頭に述べたとおり、掲載誌は休刊となりましたが、今後は媒体をWebコミックに移して、本作は継続されるとのこと。
(ちなみにこの巻のラストエピソードは、その辺りの事情を反映してか、これまでのシリーズのレギュラーが次々と顔を出す総決算的な内容。そしてここでの手の目の役割はやはり…であります)

 そうであるならば、作中で小兎が語ったように、「まァ~だこの国は悪い夢の続きを見てる」中で、手の目の役割もまだ終わらないのでしょう。

 怪異や悪人に啖呵を切りつつも、しかしどこか哀しげな目をした手の目の旅の続きを、これからも追っていくこととしましょう。

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