« 「仮面の忍者赤影」アニメ版 放映リスト&キャラクター紹介 | トップページ | 八犬伝特集その十二の四 「THE 八犬伝 新章」 第四話「浜路再臨」 »

2010.09.28

「天空の陣風」 平助、女人に陣借りす

 戦国一の痛快男児、陣借り平助こと魔羅賀平助が帰ってきました。
 足利義輝より「百万石に値する」と評されたという豪傑ながら、仕官を望まず、戦場では必ず弱き側の陣のために働く平助の活躍を描く連作短編集であります。

 今回収録されているのは、「城を喰う紙魚」「咲くや、甲越の花」「鶺鴒の尾」「五月雨の時鳥」「月下氷人剣」の全五編。
 物語に登場し、ある者は平助に助けられ、またある者は平助と対決する武将たちは、竹中半兵衛、宇佐美定満、山中鹿介、毛利元就など多士済々で、前作同様、歴史の影に平助あり、と言いたくなるような実に豪華キャストであります。

 前作は全七編収録だったところ、話数自体は減っているのですが、その分一話ごとの分量は増えているわけで、物語的には起伏に富んだものとなっており、前半で描かれた事件が意外な形で後半の物語に影響を…ということもしばしば。
 一種ミステリ的興趣のエピソードや、二段オチ的作品もあり、収録された物語の基本スタイルは共通しているものの、飽きるということは全くありません。

 しかし、前作に比べて本書の大きな特徴となっているのは、ほとんど全てのエピソードで、平助が陣借りする相手が、実は女人であるという点でしょう。
 戦国時代、実際に刀槍を手にして戦うのは(基本的には)あくまでも男。
 しかしながらそれは、その戦いに女性が参加していなかったということでは、もちろんありません。

 城にあって男を支える者、家中の実力者として国を動かす者、家と家族を喪い落ち延びる者…妻として子として母として、戦国の世で彼女たちは彼女たちの戦いを繰り広げてきたのです。

 今回平助が出会い――望むと望まざるとに関わらず――助力するのは、そんな女性たち。
 なるほど、(少なくとも表向きは)確かに弱き者である彼女たちの味方をするのは、平助の流儀にも適ったことであり、そして何よりも、ヒーローとして実に正しい姿勢であります。

 しかしながら、本書のその趣向は、女性を単純に弱き者として貶めているものでは、決してありません。
 むしろその逆…形こそ違え、戦国時代の中で命を賭けて戦う者として――その目指すところが正しいか否かは別として――敬意を表しているのであります。

 本シリーズは、平助の痛快な活躍を描く冒険譚であると同時に、彼を一種の狂言回しとして、戦国時代における男と女の在り方を切り取ってみせる人間ドラマ…そんな印象も受けるのです。

 もっとも、基本的には純情な平助がしたたかな女性陣に振り回されるという形になってしまうのは、これはこれで男目線の作劇だなァとは感じるのですが…


 さて、これは蛇足かもしれませんが、宮本ファン的に嬉しいのは、作中で、宮本先生の代表作たる「剣豪将軍義輝」との関わりが描かれるところ。
 冷静に考えれば、設定上、平助と義輝には接点があるのですからおかしくはないのですが、やはりこちらとしてはテンションがあがるところです。

 本書の後半では、あの宿敵の影も幾度か見えることもあり、これはもしかして「剣豪将軍義輝」と「海王」のミッシング・リンク的展開もあるのでは…と期待している次第です。

「天空の陣風」(宮本昌孝 祥伝社) Amazon
天空の陣風(はやて)


関連記事
 「陣借り平助」 颯爽たるいくさ人見参!

|

« 「仮面の忍者赤影」アニメ版 放映リスト&キャラクター紹介 | トップページ | 八犬伝特集その十二の四 「THE 八犬伝 新章」 第四話「浜路再臨」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「天空の陣風」 平助、女人に陣借りす:

« 「仮面の忍者赤影」アニメ版 放映リスト&キャラクター紹介 | トップページ | 八犬伝特集その十二の四 「THE 八犬伝 新章」 第四話「浜路再臨」 »