「雪逢の狼 陰陽ノ京月風譚」 孤高の狼妖と人を繋ぐもの
摂津に赴いた安倍晴明の目前で封印から解かれた狼の妖・白山。陰陽寮と因縁を持つらしい白山は、京に出現し、陰陽寮の道士を襲い始める。賀茂光榮と住吉兼良は、白山を迎え撃つべく京の警戒に当たるが、白山の跳梁の陰で、謎の外法師・水魚が暗躍する。白山の秘めた想いを知った光榮の選択は…
「月風譚」として帰ってきた「陰陽ノ京」の新シリーズ第二弾が、嬉しいことに間を空けることなく刊行されました。
新たなる主人公・無頼道士の賀茂光榮が今回挑むのは、二十数年前の封印から解かれた氷を操る狼の妖・白山。
かつて承平・天慶の乱に呼応して都を騒がせた外法師の式神として、若き日の晴明、そしてメインキャラにして彼とは犬猿の仲の住吉兼良の父と対決した、強敵であります。
しかしこの白山、狼らしく(?)誇り高く、何よりも己の戦いに対するポリシーを重んじる高潔な、孤高の妖。
己より弱い者、戦う意志を持たぬ者は文字通り歯牙にもかけず、ただ正々堂々と戦うことのできる強敵を求める――そんな妖なのです。
そんな相手になると誰よりも燃えるのは、予想通り光榮であります。
へそ曲がり同士ウマがあったというのもあるでしょう。しかし、それ以上に白山との真っ向勝負に彼を駆り立てたのは、白山が何故陰陽寮に戦いを挑むか、その理由を知ってしまったからに他なりません。
かつて都を騒がした外法師と白山の繋がり――単なる術者と式神の関係を超えたそれを知った光榮にとってできることは、白山にその想いを貫かせ、悔いなきようにさせること。
白山を、単に一方的に術で封じることはできます。しかし、それで白山の想いはどこに行くのか?
それを無視できない光榮の好漢ぶりに感心するとともに、主人公が変わっても「陰陽ノ京」を貫くもの――人と人以外のものをも繋ぐ調和の道としての陰陽道の存在は健在であることに、シリーズファンとして改めて嬉しく思うのです。
シリーズといえば、旧シリーズのレギュラーで、前作唯一直接登場しなかった伯家時継が本作では登場。
保胤との関係の進展しなさも相変わらずの微笑ましさで、ちょい役とはいえ、ファンには嬉しいプレゼントであります。
そして新シリーズとしては、おそらくこれから光榮たちの宿敵となるであろう存在がついに登場。
単独ではなく、周囲に志を同じくする者たちの存在が仄めかされているのも、またワクワクさせられます。
心優しき陰陽道の世界と、胸躍る陰陽師同士の戦いと――こちらが「陰陽ノ京」に期待する要素は健在となれば、続巻がこれまで以上に楽しみになるというものです。
ちなみに、本作の描写で、本シリーズが、時間軸的に旧シリーズの直後から続くものであることが明確になりました。
こういう部分もちょっと嬉しい配慮ですね。
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