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2010.10.17

「麗島夢譚」第2巻 武蔵と伊織の間に

 江戸時代前期の台湾(麗島)を舞台に繰り広げられる時代活劇漫画「麗島夢譚」の第2巻が登場であります。
 海賊松浦党の青年・伊織を主人公に、生きていた天草四郎、紅毛忍び・ミカにに宮本武蔵、オランダ軍にスペイン軍が島原の乱終結直後の麗島で入り乱れて展開する本作、襲撃したオランダ船の中で四郎とミカに出会ったのをきっかけに、思わぬ争いの渦中に放り込まれた伊織は、流れ流れた末、オランダと敵対するスペイン軍に身を寄せることとなります。

 この第二巻は、彼が当時の麗島におけるスペインの拠点・鶏籠にたどり着くところから始まりますが、その司令官ミゲル・デ・レオンがまた怪人物。
 愛国心と軍人・戦闘者としての能力には素晴らしいものがあるようでいて、そのキャラクターはといえば、部下の提督が「エキセントリックで激しやすい」と評するのも納得の、猛烈に浮き沈みの激しい人物であります。
(こういう表現はいかがかと思いますが「ナポレオン 獅子の時代」に登場しても違和感がないというか…)

 一つ一つの言動(特に後者)が実にマンガチック…というか舞台チックで、見ていて飽きない御仁であります。
 本作は、良い意味で作者の肩の力が抜けていると言いましょうか…登場人物のバイタリティとそのマンガチックな表現がなかなか楽しいのですが、その意味では実に本作のキャラらしいキャラであります。

 ちなみに本書の帯に謳われている「東洋vs西洋 二刀流対決!!」とは、作中で行われるこのミゲルと武蔵との対決を指したもの。
 果たして帯に描くほどであるかは疑問ですが、しかし、本書のキモの一つであるのは間違いありません。

 さて、ここで触れた武蔵ですが、実はこの巻で物語からは退場。
 このミゲルとの対決を経て、「既に大いに得るものを得た」と、日本に――もう一人の「伊織」のもとへと帰っていくこととなります。

 正直に言って実に残念なことではありますが、しかしここで気付かされたのは、武蔵と伊織の違い。
 呉越同舟とはいえ、一時はともに異国で行動を共にしながらも、武蔵と伊織で決定的に異なるものは、目的と帰るべき場所の有無でありましょう。

 剣の道を究めるという目的の為に気儘に放浪しながらも、しかし最終的に腰を落ち着ける場所を持つ武蔵。
 一方、己の仲間たちを失い、流されるままに一人異国に取り残された伊織…

 さらに、島原の乱で自分の身以外全てを――己の信仰心すらその大半を――失い、もちろん帰れば死が待つのみの四郎も含め、両者の間には、大きすぎる違いがあることに今更ながらに気付いた次第です。
(「四郎殿もまた凡夫 生き神に非ず! 迷える一求道者」という武蔵の評が重い)

 この第2巻の後半で、伊織はあくまでも麗島に残り、スペイン軍に味方してオランダ軍と戦うことを決意します。
 それはこれまで同様、流れ流された結果のことではありますが、しかし、彼が自分自身で選んだ道に違いはありません。

 その決意が果たしてこの先どのように実を結ぶのか――
 それが楽しみであると同時に、未だ心の闇から抜け出せない四郎、そして彼を支えつつも、ある陰謀(これがまた時代伝奇ファンであれば、おおと膝を叩くもの)を胸に行動するミカ、彼らとの運命の交錯も、また気になるところであります。

 問題は、第3巻がいつ刊行されるかですが…

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