« 「SENGOKU」 バカが動かす戦国史!? | トップページ | 「お髷番承り候 潜謀の影」 主従の孤独な戦い始まる »

2010.10.11

「機巧奇傳ヒヲウ戦記」(漫画版)第3巻 ヒヲウたち自身の物語を

 もう一つのヒヲウ戦記、「機巧奇傳ヒヲウ戦記」漫画版の第3巻であります。
 前の巻に引き続き、ヒヲウたちが誘き寄せられた機巧だらけの村での死闘を描いた瀬渡村編のクライマックスから、この第3巻は始まり、オリジナルエピソードを経て、アニメとは少し異なる結末へと向かっていくこととなります。

 アラシたちの手により村中の人々が人質となった中、自分たちの危険も省みず、ヒヲウたちが村人の解放のために奔走するヒヲウ。一方、山形・伊藤ら長州志士は、自分たちの目的のため、華と雪を自分たちの手中に収めんと行動します。

 いわば三つ巴の状況の中、死闘の果てに谷底に転落しかかった炎。その炎を救ったのは、村人たちと…
 と、クライマックスでは、ヒヲウの子供らしい誠意が人々の心を動かすという、アニメでも幾度か見られた構図が、より感動的な形で描き出されることとなります。
 甘いと言わば言え、その甘さを美しい形で描けるのも、ヒヲウというキャラクターの強みであります。


 そして二つほどオリジナルエピソードが入るのですが、このエピソードの完成度も高い。
 一つ目のエピソードは、戦いの中でそれぞれの仲間とはぐれたヒヲウ・華・アラシが、生き延びるために力を合わせるうちに…というもので、ある意味定番の遭難ネタではありますが、そこに滅びゆくニホンオオカミを絡めることで、アニメで取り入れられてもおかしくないエピソードでありました。

 もう一つは、アニメにも登場した女風陣・ヌエと彼女の三段変形機巧との山中での対決。
 アニメよりも、形を変えて襲い来る機巧という存在うまく使って見せた感のあるこのエピソード、しかし何よりも印象に残ったのは、戦いの中で途方に暮れた子供たちが言い争いを始め、なすすべをなくしたサイが流した涙でありまりました。
(そして涙が伝染するなか、そこで一人泣かないのが…というのも「泣かせる」展開です)

 ちなみにこのヌエは、アニメでは京都編と最終回に登場しましたが(漫画では京都編がオミットされていることもあり)、こちらではこのエピソードと次の高山編に登場。
 NHKアニメではできないような技も繰り出し、才谷を捕らえた上にすり替わるという活躍を見せるのですが…


 さて、その高山編で描かれるのは、アニメ同様、アラシたちの操る暴走屋台との対決。
 が、そこで屋台のベースとなるのが、この漫画版の第一巻で、マスラヲや才谷、吉田松陰らが作り上げた火車という展開にはやられました。
(ここで過去編との繋がり――才谷とマスラヲ、風陣の繋がり――が浮かびあがることもさることながら、ヒヲウたちが初めて、マスラヲと風陣の繋がりを感じるという構成がうまい!)

 そしてそのマスラヲ製の機巧を倒すのが、同じくマスラヲが残したエレキテルというのもまた見事。
 炎のエレキテルが屋台を焼き尽くすシーンはアニメでも印象的でしたが、漫画版ではこの繋がり故に、より強く印象に残るのです。


 この漫画版、アニメ版に比べると歴史上の事件・人物への関与はかなり少ない――むしろ第一巻に描かれた物語に関連するものに集約されていると言うべきか――のですが、しかしその分、ヒヲウたち自身の物語をより掘り下げて描いているという印象があります。

 この辺り、アニメと漫画、週一放送と月刊誌連載という扱える情報量の違いに起因する部分が大かとは思いますが、しかし媒体が異なれば、描き方も異なることは当然のこと。漫画版ヒヲウ戦記としては、ベストのチョイスであったと思います。

 さて、この巻の終盤からは、アニメ版の京都編は飛ばして一気に三剣藩でのクライマックスに突入。アニメとはまた大きく異なるラストの展開に注目であります。


「機巧奇傳ヒヲウ戦記」第3巻(神宮寺一&会川昇&BONES 講談社マガジンZKC) Amazon
機巧(からくり)奇伝ヒヲウ戦記 (3) (マガジンZKC (0053))


関連記事
 「機巧奇傳ヒヲウ戦記」第1巻 至誠が動かしたもの
 「機巧奇傳ヒヲウ戦記」(漫画版)第2巻 もう一つのヒヲウ戦記

|

« 「SENGOKU」 バカが動かす戦国史!? | トップページ | 「お髷番承り候 潜謀の影」 主従の孤独な戦い始まる »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/49706973

この記事へのトラックバック一覧です: 「機巧奇傳ヒヲウ戦記」(漫画版)第3巻 ヒヲウたち自身の物語を:

« 「SENGOKU」 バカが動かす戦国史!? | トップページ | 「お髷番承り候 潜謀の影」 主従の孤独な戦い始まる »