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2010.10.30

「女子読み「水滸伝」」 男子マニアも納得の水滸伝本!

 最近、「乙女」や「女子」がついた本が、結構な数出ていることに気づきます。個人的には縁のない世界だと思っていたのですが、その中に「水滸伝」本が登場したとあれば話は別。
 というわけで、当方男子ですが、「女子読み「水滸伝」」を読みました。

 そもそも、女性が「水滸伝」を読むのか…? という(ある意味失礼な)疑問を持たれる方がいるかもしれませんが、「水滸伝」ファン…と言わないまでも、「水滸伝」に興味を持つ方は決して少なくないのではないか…と思っております。

 というのも、北方水滸伝には女性ファンが結構な数存在している印象がありますし、「幻想水滸伝」などは女性ファンが中心(幻水は「水滸伝」じゃない! とおっしゃる方もいるかと思いますが、少なくともこれをプレイすれば原典になにがしかの興味を抱くでしょう)。
 そう、「水滸伝」は別に男性だけのものではないのです。

 しかし、興味を持ったからといって、原典が取っつきやすいものかといえば、それは微妙なわけで――原典は結構な分量ですし、研究書は専門的なものが主体。折角興味を持っても、およそアクセスしにくい作品であることは間違いありません。
 と、前説が長くなりましたが、このような状況下において、本書が登場する必然性と意義があるのでしょう。

 本書は、そんな女性層をターゲットにしたと思われる「水滸伝」概説本。
 林冲の妻・張氏と「金瓶梅」でもお馴染みの潘金蓮の二人の女性によるガールズトーク(!)を中心に、原典のあらすじ、人物紹介、その他雑学的知識の大きく分けて三部構成となっています。

 原典では貞淑と淫奔という、両極端に描写された二人ですが、どちらも妙齢の女性。この二人による「水滸伝」トークは、内容的には紹介半分ツッコミ半分といったところですが、しかしいい意味で肩に力の入っていないスタイルは、入門者には接しやすいものだと思いますし、既にそれなりの知識を持ったファンにとっても、色々な意味で刺激的であります。

 特に面白いのは、本書の大半を占める人物紹介でしょう。
 梁山泊の百八星+α、原典に登場する主だったキャラクターの紹介というのは別に珍しくない企画――というより最近の水滸伝本はこれがメイン――ですが、紹介に当たっての分類が実にユニークなのです。

 その分類とは、「イケメン」「軍人」「ワイルド」「やんちゃ」「ハイスペック」「職人」「中間管理職」「空気」「ジョーカー」――
 いやはや、私もここしばらく日本で商業出版された水滸伝本は大抵読んでいるつもりですが、これほど独創的な分類は見たことがありません(まあ、各人がどの分類に属するかには異論はありますが、それはまあ主観的なものということで…)

 しかし、梁山泊での職位職種や出自等で分類するのに比べ、本書のいわば「属性」でキャラクターを分類するという試みは、「水滸伝」のような非常に多くのキャラクターが、それも一つ所に集結する物語には存外似合っているように思えます。
 そして個人的に感心させられたのは「やんちゃ」という分類。これは男性目線では絶対に出てこないものであり――そして言われてみればなるほど納得の着眼点であります。


 さて、本書が「女子読み」、入門者向けを標榜しながらも、私のようなおっさんファンが読んでも非常に面白いのは、実にこのような視点の妙であります。

 女性向けだから女性に語らせるというのは、安易に感じられるかも知れませんが、しかし男性原理で動く「水滸伝」を女性目線で語るというのは、作品世界を俯瞰的に眺めるという試みに他なりません。
 しかもその視点は、全く対照的な性格の――それでいて共に作中の男性原理の犠牲者である――二人のトークという形式で、より鮮明になっていると感じられます。

 いわば原典に対するオルタナティブな視点を提供している…というのは大袈裟すぎるかもしれませんが、個人的にはこの点に、大いに感心した次第です。


 ツッコミ満載のガールズトークで、入門者にも「水滸伝」を楽しみ、親しんでもらう――その目的を十分以上に果たしていると同時に、原典への新たな視点(の可能性)も感じさせてくれる本書。
 タイトルとは裏腹に、水滸伝ファンであれば、老若男女を問わず読んでみて損はない一冊です。


 まあ、それはそれとして、あやまれ! 董平と杜興にあやまれ! …とは思うわけですがっ

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女子読み「水滸伝」


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