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2010.10.15

「もののけ本所深川事件帖 オサキ鰻大食い合戦へ」 店の命運背負った大勝負!

 深川を騒がす放火魔。その現場では、紅色の火の玉が目撃されていた。朱引き稲荷のベニ様と事件の関わりを追う周吉とオサキ。だがその最中に周吉の店の蔵が放火され、預かりものの掛け軸が燃えてしまう。店の危機を救うため、周吉とオサキは、賞金百両目当てで鰻の大食い合戦に出場することに…

 本所深川の献残屋・鵙屋で手代を勤めるオサキモチの青年・周吉と、彼に憑いた妖・オサキの、凸凹コンビの活躍を描く「もののけ本所深川事件帖」が、期待通りシリーズ化されました。
 第一弾の「オサキ江戸へ」に続くシリーズ第二弾のタイトルは「オサキ鰻大食い合戦へ」…と、これはまたずいぶんと個性的というかインパクトあるタイトルですが、しかし内容的には全くもってこの通りなのであります。

 自分の奉公する鵙屋のため、そして思わぬことから受ける羽目になった王子稲荷の狐の依頼のため、深川を騒がす放火魔を追うことになった周吉とオサキ。

 放火現場で常に目撃されるのは、紅色の火の玉と、紅色の獣の毛――この条件に当てはまるのは、かつて家康から江戸の防火を祈願されたという朱引き稲荷のベニ様狐のみなのですが、放火はベニ様の仕業なのか…

 これだけでも難題なところに、さらに周吉を襲う面倒事。番頭の油断で、当の鵙屋の蔵が放火され、武家から預かっていた値百両の掛け軸が燃えてしまったのでした。
 ことが公になれば、鵙屋はおしまい。そんな周吉が店の命運を背負って挑むことになったのは、深川で開催される鰻大食い合戦で…

 と、タイトルに偽りなく、大食い合戦へ挑む周吉とオサキ。実はオサキモチは、オサキと共にいる間はそこの抜けたような大食いとなるため、この勝負は周吉の楽勝…と言いたいところですが、それではもちろんおはなしになりません。
 挫折して再起を賭ける元力士、前作も登場した柳生流の怪老人・蜘蛛之介、そして店の苦境を救うため、あのベニ様の助けを借りて出場した鰻屋の娘――

 彼らをはじめとする個性的な出場者相手に、奮闘する羽目となる周吉ですが、しかしその間も放火魔の跳梁は…と、放火魔騒動と大食い合戦、一見無関係な二つの流れが終盤で綺麗に重なり、大団円を迎えることとなります。


 このように、ストーリー的には至って真面目とはいえ、シチュエーションや展開はかなりコミカルな方向に舵を切った感のある本作。
 オサキをはじめとするのキャラの面白さはあったものの、実は結構重いストーリー展開だった前作とは、その点でだいぶ異なる印象があります。

 が、それが失敗したかといえば、全くそんなことはなく、むしろ成功したと言っても良いでしょう。

 適度にシリアス、適度に抜けたストーリーに、個性的でよそではお目にかかれないような連中――その筆頭が主役の一人と一匹であることは言うまでもありません――を投入し、騒動を描き出すという本作のスタイルは、むしろ違和感なく受け入れることができました。


 もちろん本シリーズも、作者自身もこれが第二作目。これで必ずしもスタイルが固まるとも思えませんし、それが良いとも思いません。
 シリアスもコメディも、同じ舞台とキャラクターで展開させることができる…それを証明してみせたのが、本作の最大の収穫かもしれません。
 シリーズ第三弾も、楽しみに待っていてよさそうであります。

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