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2010.11.12

「機巧奇傳ヒヲウ戦記」(漫画版)第4巻 そして新しいPageへ

 もう一つの「機巧奇傳ヒヲウ戦記」、漫画版の最終巻、第4巻であります。
 アニメ版では三剣藩を経て、下関での戦いで結末をみた風陣との戦いですが、この漫画版では、三剣藩で決着がつき、その後に漫画のみの、もう一つの結末が描かれることとなります。

 三剣藩主の座を狙い風陣と結んだ叔父の元に自ら戻った華と雪。二人を追って三剣藩に入ったヒヲウを待ち受けていたアラシは、合体機巧・命でヒヲウの炎と激闘を繰り広げます。
 しかし命のパワーの前に苦しめられる炎。さらに、ヒヲウたちの前に現れたのは、風陣のために働いていた父・マスラヲ…
 この辺りのストーリーは、アニメ版とほぼ同じですが、大きく異なるのはここからであります。

 アニメの三剣編で描かれるのは、ヒヲウたちとマスラヲの別れまでであり、風陣との決着は、その後の長州編まで持ち越されました。
 しかし、この漫画版では、長州まで行かず、三剣藩で全ての決着がつくことになります。

 なるほど、アニメ版の構成自体は――馬関「戦争」の中でヒヲウが自分の成すべき道を見出す件など――良くできていたと思いますが、史実や実在の人物が多く絡み、その描写を漫画で行うのは難しいでしょう。
 そう考えると、ここでマスラヲとの別れと風陣との決着、二つの山をまとめてしまうのは、大いにアリかと思います。

 そして始まるのは、漫画版オリジナルの大決戦。アニメでは途中でフェードアウトしたアカがクロガネに叛旗を翻して海鬼を強奪し、登場人物の全てを巻き込んだ大乱戦が展開されます。

 この海鬼、アニメ版では水中と海上とで暴れ回りましたが、この漫画版ではついに空まで飛ぶ万能戦艦ぶりを発揮。
 空から全てを制圧しようとするアカに対し、ヒヲウが、才谷が、アラシが、半蔵が、力を合わせ挑む――
 これはこれで活劇しすぎていて、アニメで描かれたヒヲウの悩みがオミットされているという批判もできるかもしれませんが、しかし、その中で親と子の絆はしっかりと――アニメとはまた異なる形で――描かれていきます。

 そして戦いの果て、マスラヲはアニメとはまた異なる形でヒヲウたちと別れを告げて文久篇は終わるのですが――


 その先に迎える最終回のタイトルは「明治篇」。なんとなんと、アニメでは描かれることのなかった明治時代のヒヲウたちの姿が描かれることとなります。

 ヒヲウ(前髪は普通)はシシ、マチ、ジョウブらと機巧郵便を営み、サイやテツは岩崎弥太郎を後見人に学問に励んでいる様子(マユは医者に嫁いで子持ちに)。
 それぞれに平和に暮らしている中、開通間近の鉄道と競うように線路を走る、炎に似た謎の機巧が出現。さらに華が何者かに誘拐され、ヒヲウのもとに挑戦状が届けられます。

 …とくれば犯人は予想通りアラシ。漫画版では三剣での決戦で行方不明になっていた彼は、世界中を巡って腕を磨き、ヒヲウと雌雄を決すべく、新たな巨大機巧をひっさげて日本に帰ってきたのですが――

 ヒヲウがそのアラシの想いにどのように応えるかは伏せておきますが、ああ、やっぱりヒヲウはヒヲウだと納得できること間違いなしの結末を物語は迎えることになります。


 もっとも明治篇はこの一話のみ、ここに至るまでのヒヲウの、アラシの物語はほとんど語られず、想像するほかありません。
 しかしアニメで冒頭が描かれたのみの第二部(漫画流に言えば「慶応篇」ということになるでしょうか)どころか、さらにその先のヒヲウの物語を見ることが出来たのは、ファンとして本当に嬉しいお話。

 そして、アニメED映像を思わせる美しい結末を見るに至り、本当に読んで良かったなあと、しみじみと感じさせられます。


 アニメと漫画というメディアの違いというものはやはり非常に大きいと思いますが、しかしその制約の中で、見事にもう一つの「機巧奇傳ヒヲウ戦記」結末を迎えた本作。
 アニメと続けて読み直すことにより、改めて、その面白さを再確認いたしました。

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