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2010.11.23

「PEACE MAKER鐵」第6巻 歴史への絶望と希望

 世の中、あきらめないで待っていて良かった、と思うことが時々ありますが、これもその一つでしょう。
 五年の長きにわたって連載が中断されていた「PEACE MAKER鐵」が復活し、この第6巻で油小路編が完結したのですから。

 と、第6巻の内容を語る前に触れたいのが、第5巻を読んだ時の絶望感であります。

 油小路編の前編ともいうべき第5巻では、遂に新撰組と御陵衛士の対立が決定的なものとなり、史実通り新撰組側が油小路で伊東を暗殺――と思いきや、謀略では伊東の方が一枚上手。
 暗殺から逃れるや、逆に油小路に張っていた原田・永倉の隊を包囲し、さらには新撰組屯所を逆に襲撃するという挙に出ます。

 その乱戦の中で沖田はさらに吐血、土方は乏しい戦力で伊東を迎え撃つことに。
 そして、主人公である市村鉄之助は、彼に対してほとんど一方的に恨みを持つ北村鈴によって坂本龍馬暗殺の濡れ衣を着せられ、乱戦の中に乱入してきた海援隊に命を狙われることになります。
 一方、斎藤一はその混乱の中で鈴の側に付き…

 と、主人公側に希望の光がほとんど全くない状態で第5巻は終わり――それだけならまだしも、作者からの連載中絶発言があったため、当時は本当に絶望的な気持ちでページを閉じたものです。

 それが(おそらくはTVドラマ化の影響もあって)連載再開し、こうして単行本の続巻が登場…というだけでも嬉しいのですが、その内容の方も素晴らしかったのです。

 一度は袂を分かっても、やはり心の奥底では繋がり続けていた永倉・原田・藤堂の新撰組三馬鹿の復活と別れ。
 遂に一対一でぶつかり合う土方と伊東。
 初めて龍馬の死を知り、その嘆きが海援隊を動かす鉄之助。
 そして斎藤の決意…

 確かに史実通りに悲しい別れを告げることとなった者はおりますが、しかし前巻の絶望的状況がここまで鮮やかに、そして美しく転じていくとは…と、舌を巻きました。

 特に素晴らしいのは、この巻のもう一人の主人公というべき斎藤の描写でしょう。
 本作においては一種の超能力者的な存在である斎藤。その瞳には、未来の事実が――非常に端的に言ってしまえば年表が――映ります。

 しかし、彼にとってそれは、自分が歴史の傍観者に過ぎない――すなわち、自分は歴史の結果に影響を与えることがない無力な存在であることを認識させる意味しかありません。
 その絶望から、彼は鈴と行動を共にすることになります。

 しかし、そんな斎藤の凍てついた心を、海援隊に捕らわれ、死を待つばかりの鉄之助の言葉が動かします。
 それは、彼にも歴史においてできることがあると告げる言葉。
 歴史の結果は変わらない。しかしそれはその過程までを定めるものではなく…そして、その中で自分にも出来ることがある。

 自分が傍観者ではないと知った斎藤の強さは、鈴の復讐心という、この物語を縛る強大な鎖をも揺り動かすほどの強大なもの。
 皮肉にも、歴史に絶望していた男が、歴史に一つの希望をもたらすという構造の妙に感じ入った次第です。


 そして物語は北上編へ――連載はまた休止とのことですが、その復活の日が遠くないことを、希望しています。


 それにしても平助の死のシーンは、ドラマ的にも、一部読者へのサービス的にも素晴らしいインパクトがありました…
 三馬鹿の体格差は、このシーンのためにあったのではないかと考えたくなるほどに。

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