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2010.11.09

「亜智一郎」シリーズ(漫画版) 幕末名探偵ふたたび!?

 人間、一念の極まるところ奇跡を起こす…というのはもちろん大袈裟ですが、刊行されているかわからない作品でも、探し続ければ出会うこともあるもの。
 この池田恵先生による漫画版「亜智一郎」シリーズとの出会いは、私にとってはまさにそれであります。

 この「亜智一郎」シリーズは、元々は故・淡坂妻夫先生の連作時代ミステリ小説(そして同時に、現代を舞台とした連作ミステリ「亜愛一郎」シリーズのスピンオフ、時代小説版であります)。
 幕末の江戸を舞台に、タイトルロールの亜智一郎ら雲見番四名が、将軍直属の隠密として、様々な怪事件に挑むという趣向の作品です。

 そもそも雲見番とは何か? と言えば、これが江戸城の雲見櫓から日がな一日空を眺めて、天変を感知するというお役目。
 ずいぶん太平楽な役目もあったものですが、その頭の亜智一郎は、実は人並み外れた推理力の持ち主、安政の大地震をきっかけに、江戸城に乱入しようという一党の陰謀を未然に察知し、将軍の命を救ったことをきっかけに、既に往時の力を失った御庭番に代わり、将軍直属の隠密を拝命することになります。

 彼の部下となるのは、ただ一人幕末まで甲賀流忍法を継承する藻湖猛蔵、怪力で総身に刺青を入れた古山奈津之助、そして武士ながら大の芝居マニアで武張ったことは大の苦手の(にもかかわらず、件の地震で建物に挟まれた片腕を自分で切り落としたと――実は猛蔵に斬ってもらったのですが――緋熊重太郎の三名。

 この個性的な四名が、およそ事件とも思えぬようなささいな出来事をきっかけに、次々と陰謀を暴いていく、というのがシリーズの基本スタイルであります。


 さて、原作の紹介が長くなってしまいましたが、今回出会うことができた漫画版は、「無敵のビーナス」などの池田恵先生が、秋田書店の「サスペリアミステリー」誌に連載したもの。
 女性向け漫画における時代ものには密かに強い出版社らしく、同誌には時代ミステリの漫画化作品が結構な数掲載されているのですが、その一つが本シリーズなのです。

 実は本シリーズ、雑誌掲載時に読みのがしてしまったものの、単行本化されておらず、何とか読んでみたいものと非常に残念な思いをしておりました。
 それでも何らかの形でまとめられているはず…例えば、オリジナル編集のコンビニコミックの形式で、と考えておりましたが、その予想は見事当たり、同誌掲載の時代ミステリ集の中に収録されていたのを今回発見した次第です。

 さて、今回収録されているのは、将軍に献上された時計に秘められた陰謀を智一郎が暴く「南蛮時計」、大地震と雲見番誕生を描く「雲見番拝命」、老人を往生させる秘儀の背後に意外な惨劇が潜む「補陀落往生」、将軍の御落胤探しが思わぬ形で落着する「女形の胸」、そして猟奇的な儀式殺人の末に思わぬ歴史的事件が浮かび上がる「薩摩の尼僧」の全五編。

 内容的には、原作をかなり忠実に漫画化しているため、正直なところ良くも悪くも言うことなしなのですが――ただし、「女形の胸」のトリック(?)は、漫画にすると一層――やはり池田先生の絵が良いのです。

 池田先生の絵柄は、丸みがかった線で、ある意味いかにも漫画的(?)なのですが、それが、智一郎をはじめとして非常にキャラが立った雲見番衆を描くのに、よくマッチしているという印象。
 特に智一郎の、優男で知的なんだけどどこかすっとぼけてちょっとずるそうなキャラクターがイメージ通りで実に良いのです。

 さすがに新作は難しいかとは思いますので、今この時期にこうして出会えただけでも感謝するべきなのかもしれませんね。

「亜智一郎」シリーズ(池田恵&泡坂妻夫 秋田書店トップコミックスWIDE「大江戸捕物ミステリー」所収) Amazon


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