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2010.11.19

「若さま同心徳川竜之助 双竜伝説」 対決、大物ゲスト!?

 巻数二桁の大台を超えてまだまだ頑張る「若さま同心徳川竜之助」シリーズ最新巻であります。
 今回はゲストキャラに大河ドラマでお馴染みのあの大物が登場、竜之助と対峙することになります。

 己を縛ってきた因縁を断つため、前作のラストで師・柳生清四郎に挑んだ竜之助。
 その目的は、葵新陰流の秘剣・風鳴の剣を封じること…
 と、いきなり盛り上がったところから始まる本作ですが、師弟対決はあっさり終了。

 師の剣を封じることに成功したいま、風鳴
の剣を使えるのは竜之助一人であり、彼に秘剣を使う意志がない以上、これで秘剣は絶えたはずなのですが、しかし時代の流れがそれを許しません。

 倒幕のために暗躍する薩摩の西郷隆盛は、中村半次郎が入手した二つの秘剣の因縁(前作の感想にも書きましたが、これが本当に面白ひどい。どうすればこんなアイディアが思いつくのか)を利用して、江戸と尾張の両徳川家を相争わせようと企むのでありました。
(それにしてもこの西郷と半次郎が、後に「西郷盗撮」で描かれたようになるのか…と思うのは色々な意味で間違っていますが、これはこれでファンの楽しみであります)

 かくて江戸に送り込まれた謎の刺客。風鳴の剣と雷光の剣、両秘剣に襲いかかるその正体は…

 という部分だけを書くと、どう見ても剣豪もののあらすじですが、もちろん本作は同心ものでもあります。
 今回もこれまで同様、竜之助が四つの怪事件・珍事件――非常に色っぽい姿で殺された芸者、屋根の上の獅子頭を巡る職人殺し、いつも蕎麦を切らしている蕎麦屋の謎、当たりすぎたのが災いして殺された占い師――に挑むことになります。

 個々のエピソードの内容はともかく、ワンパターンといえばまさにその通りではあるのですが、しかしそれでも毎回それなりに読ませてくれるのは、これはもうさすがと言うべきでしょう。
 毎回書いておりますが、ストーリー展開もさることながら、ほんのわずかな量でキャラを立ててしまう文章と、それを可能とする作者の観察眼の確かさに、感心したところです。


 そして、冒頭に述べた大物ゲストですが…本の帯や紹介に大きく出ているので書いてしまって良いでしょう。
 双竜のもう一方――坂本竜馬であります。

 謎の刺客が北辰一刀流であったこともあり、たまたま江戸を訪れ、奉行所にマークされていた竜馬と剣を交えることとなった竜之助。
 二人の竜の対決の行方は…もちろんここでは書きませんが、竜馬との出会いが竜之助にとって大きな転機となるとだけは書いても良いでしょう。

 そしてそれ以上に個人的に興味深かったのは、竜馬が語る、ある言葉です。
 少し長いですが、引用しましょう――

「そんな荒唐無稽な話を信じられるか、というやつもいた。だが、わしは信じた。荒唐無稽だから信じた。ちっぽけな世界にしか住もうとしないやつは、荒唐無稽を信じない。だから、この世を変えようともしない。この世がいかに柔らかくて、いかようにも変えていけるってことを」

 いかにも竜馬らしい台詞であると同時に、
作者の小説観、フィクション観とも言うべきものが見えるではありませんか。


 さて、紆余曲折を経てついに復活した竜之助の剣。
 真の敵の姿もほぼ見えたところですし、そろそろ決着…といって欲しいところです。

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