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2010.11.26

「抜け荷の宴 浪花の江戸っ子与力事件帳」 謎の教団、大坂に蠢く

 抜け荷の疑いがある船の探索にあたった伊吹伝四郎だが、船が出火し、荷物は全て失われてしまう。その荷が、薩摩藩が近衛家に収めるものであったことをきっかけに、伝四郎は思わぬ罠にはまることに。一方、大坂の町では、大秦寺党なる教団が勢力を伸ばしていた。抜け荷と大秦寺党の繋がりとは…

 快調に巻を重ねる「浪花の江戸っ子与力事件帳」シリーズ第三弾であります。

 タイトルにあるように、江戸っ子でありながら大坂西町奉行所の与力を勤める変わり者(?)・伊吹伝四郎の活躍を描く本シリーズ。
 「○○の宴」と続くサブタイトル、今回は「抜け荷の宴」――謎の教団が暗躍する大坂で抜け荷事件に巻き込まれた伝四郎が、姿なき敵の奸計の前に、シリーズ始まって以来の危機を迎えることとなります。

 抜け荷の密告を受けて、大坂は安治川の河口に停泊した船に手入れに入った伝四郎。
 そこでご禁制の鉄砲を発見するものの、船が出火したために証拠は全て失われ、事実を知るはずの船の人間も命を落とす始末であります。

 しかも積み荷の朝鮮人参は薩摩藩から京の近衛家に収められるはずのもの。
 薩摩藩の用人や問屋の商人に促され、京まで事情の説明に赴いた伝四郎は、人殺しの濡れ衣を着せられ、あろうことかおたずね者にされてしまうのでした。

 一方、伝四郎の友人の赤穂浪人・工藤京太郎は、子供を失った心の痛手から、最近大坂で評判の大秦寺党なる教団に身を寄せることになります。
 諸人の平等を説き、まもなく救い主が現れると喧伝する大秦寺党は、京太郎はますます教団にのめり込んでいきます。

 全く無関係に見える抜け荷と伝四郎の濡れ衣、そして大秦寺党。
 さらに、伝四郎のひいきの飲み屋の女将・おきぬが拾った口のきけぬ子供に、何者かに殺された身元不明の浪人、大坂に潜伏するという切支丹――
 混沌とした状況の中で、事件は思わぬ真実を現すこととなります。

 と、あらすじだけ見ると、一見普通の奉行所ものにも見える本作ですが、それにとどまらないのが、本シリーズ定番の伝奇的ガジェットであります。

 今回のそれは、秦幻灯斎なる人物が主催する謎の教団・大秦寺党。名前からして何とも胸躍る響きでありますが、弘法大師の教えを汲むという教団の正体が実は――と、本作に彩りを添えてくれます。

 その正体というのは、正直なところ、わかる人間には一発でわかるものではあるのですが、しかし作中でその謎を解くのが、あの有名人というのが――その人物の経歴を考えれば――なかなかうまいわいとニッコリ。

 さらにいえば、この人物とあともう一人の有名人が、伝四郎の窮地を救うという展開もなかなか面白いのです。
(ただしこの二人、シリーズ第零弾と言うべき幻の作品「びーどろの宴」からの登場なのが、この作品を読んでない身には何とも悔しい。ぜひ復刊を!)


 もっとも、もう一歩キャラの扱いに踏み込めば面白くなるのに…という、ある意味これも本シリーズ恒例の部分が今回もあるのは、やはり残念であります。
 伝四郎の矍鑠たる母と、教団幹部の思わぬロマンスが何だか中途半端な扱いですし、謎の子供と、子供を失った京太郎に関わりが生まれるものと思っていたら…。

 前回同様厳しいことも書いてしまいましたが、伝奇風味を巧みに取り込んだ奉行所ものとして、本作、本シリーズが珍重すべきものであるのは間違いのないところでありますし、ストーリー展開的には、これまでのシリーズでも最も盛り上がったかと思います。
 これからの作品にもやはり期待してしまうのです。

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