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2010.11.02

「おたから蜜姫」 正史へのカウンターとしての竹取物語

 蜜姫の嫁入り先である風見藩時羽家に、伊達家から縁談が持ちかけられた。その条件は、竹取物語に登場する宝物を持参すること。竹取物語の謎解きに燃える母・甲府御前を知恵袋に東奔西走する蜜姫だが、解き明かされてゆく謎は、伊達家と徳川家を結ぶ一大秘密に繋がっていた。果たして財宝の行方は…

 米村圭伍先生の蜜姫シリーズ第二弾「おたから蜜姫」が文庫化されました。
 イラストは米村作品ならばこの人! の柴田ゆう先生でまずは一安心…なのですが、内容の方は一筋縄ではいかないくせものなのです。。

 主人公・蜜姫は、豊後温水藩の姫君…ながら、剣術かぶれで退屈が大嫌いのとんだ暴れ姫。
 前作「おんみつ蜜姫」では、尾張徳川家の絡んだ天一坊事件を解決した蜜姫が今回挑むのは、意外にも「竹取物語」の謎であります。

 今日も今日とて貧乏藩同士せこい企みを巡らせる、父と婚約者の風見藩主。そこに突然舞い込んだのは、風見藩主と伊達家の姫の縁談話。
 しかしその姫は自分を月から来たと思いこんでいる変わり者で、伊達家からの条件は、竹取物語に登場する五つの宝物のどれか一つを持参すること――

 かくて、その宝探しを命じられたのが蜜姫。冷静に考えるとヒドい話ですが、蜜姫にとって風見藩への嫁入りは望んだ話でなし、何よりも大冒険の予感!
 と、脳筋気味の姫は二つ返事で承諾し、読書マニア・学問マニアの母・甲府御前こと宇多を知恵袋に探索に乗り出すのですが…

 と、こう書けば、いかにも王道の(コミカルな)時代伝奇小説に見えるのですが、実は本作は、大部分を、甲府御前による竹取物語考に費やす、歴史推理ものとしての側面を非常に濃く持つ作品なのです。

 日本人であれば誰もが子供の頃から親しんでいるであろう竹取物語ですが、なるほど、言われてみれば不思議な部分が多々ある物語。
 その最たるものは、作中で帝の権威がかぐや姫や月人に通じず、むしろ貶められているにもかかわらず、宮中でも読まれていたことであります。

 本作では、かぐや姫の宝物を追う過程の中で、こうした謎の一つ一つに回答を見いだし、かぐや姫とは何者だったのか、そこにまでたどり着くことになります。

 そこに浮かび上がるのは、大げさに言えばもう一つの日本史、時の権威権力に対するまつろわぬ民の物語。
 我々の良く知るおとぎ話から、この陰の日本史が浮かび上がる過程は、なかなかにエキサイティングであります。

 もっとも、本作のこの内容・展開には賛否あるのは間違いないところでしょう。
 作中でも蜜姫が「これでは「おたから蜜姫」じゃなくて「おたから宇多」だわ」とメタな突っ込みを入れていますが、姫の大活劇を期待していたところに、確かに延々とディスカッションドラマが展開されれば、面食らいもします。
(もっとも、米村作品では時々このようなスタイルのものがあるのですが)

 しかし、本作は決して竹取物語考のみで終わるものではありません。
 何故伊達家が竹取物語の秘密を求めたのか――物語のそもそもの発端の源には、江戸時代初期に起きたある事件が関わり…そしてその秘密は、当代の将軍である吉宗をも動かすことになります。

 そしてその中に示されるのは、古代から江戸時代まで変わらぬ、欲望にとらわれた権力者の醜さ傲慢さと、それに振り回されざるを得ない周囲の(在野の)人々の悲しさであります。

 もちろん本作は、その現代にまで通底する構図を、そのままにはしておきません。
 最後には権力者への痛烈で皮肉なしっぺ返しが用意されているのですが、やはりこの点は米村作品と嬉しくなります。

 思えば米村作品では、権力(者)へのカウンターの担い手として、女性たちや冷や飯食いが常に主役となってきましたが、その視点はここでも健在です。
 そして本作ではさらに、、正史へのカウンターとして「竹取物語」を設定することにより、歴史の陰で泣き、そして戦ってきたかぐや姫(たち)の姿を示すことにより、その視点をさらに強調しているやに感じられます。

 かぐや姫から蜜姫へ…姫君も様々ですが、しかし、彼女たちの姿には、作者が歴史の中に見る一つの希望の姿が、感じられるのです。

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