« 「男たちの戦国 新編武将小説集」 敗者の中の美しさ | トップページ | 「快傑ライオン丸」 第07話「呪われた金山 ギンザメ」 »

2010.12.11

「柳生無頼剣 鬼神の太刀」第1巻 見参、岡村十兵衛

 江戸で相次ぐ残虐な辻斬りや押し込み。その首魁が三代将軍家光という噂を耳にした柳生十兵衛は賊を捕らえんとするが、異形の技を操る「常夜衆」なる者たちに、手も足も出ず敗れてしまう。己の無力さを悔やみ、常夜衆との対決を決意する十兵衛だが、敵の陰謀は想像を絶するものだった…

 ここしばらく、伝奇ものにはいささか冷たい印象のある「コミック乱ツインズ」誌で、ほとんど唯一気を吐く時代伝奇活劇「柳生無頼剣 鬼神の太刀」の第1巻が刊行されました。

 舞台は江戸時代前期、柳生十兵衛が三代家光の剣術指南役を務めていた頃。
 江戸を騒がす残虐な賊の首魁の顔が、家光と瓜二つとの噂を聞いた十兵衛は、単身賊を待ち伏せるのですが…しかし、彼の前に現れたのは、剣の常識からは計り知れない動きを見せる奇怪な武術使いの一団。

 その一団――常夜衆の前に手も足も出せず敗れた十兵衛は、目の前で無辜の人々を惨殺された挙げ句、締め落とされて見逃されるという屈辱を味わうことになります。
 そして、意識を失う直前に見た首魁の顔は、確かに彼が良く知る家光のもの…

 かくて十兵衛は、祖父・石舟斎とも面識のあるという怪老人・鴉の手を借りつつ、常夜衆の謎に迫らんとするのですが、しかし父・宗矩は何故かそんな彼に冷たい態度であたります。
 しかも常夜衆の凶行には、上からの圧力で奉行所も捜査することができず、十兵衛の不審と不満は募るばかり。

 果たして常夜衆の正体は、戦いの中で片目を失った十兵衛の運命は。そして、柳生新陰流と常夜衆との意外な関わりは…
 と、これを伝奇と呼ばずして、何を伝奇と呼ぶ、と言いたくなるような活劇であります。

 その本作の作画を担当するのは、ベテラン岡村賢二。
 「コミック乱ツインズ」誌では、これまで「真田十勇士」「舫鬼九郎」など、伝奇活劇コミックを何作も漫画化していますが、本作においても、そのセンスは健在です。

 十兵衛の振るう正当派の剣、常夜衆の怪人たちの操る数々の妖術めいた武術――ちなみに常夜衆の面々、蛟・ダイダラ・百目・火車と、皆妖怪から名前が取られているのが、設定とマッチして面白い――の描き分けも確かで、本作のキモであろう正邪の武術の激突がはっきりと描き出されているのも気持ちよいのです。

 特に巨漢ダイダラとの対決は十兵衛の文字通り体当たりバトルに鴉の爺さんの豪快なフォローもあって、綺麗事のない死闘というものを見事に描き出していたと思います。

 その反面、ストーリー展開はちょっと急ぎすぎの面があり、十兵衛のキャラクター描写などももう少し突っ込んでくれてもよかったようにも思いますが、これはこれで一気呵成に展開する物語を楽しむべきなのかもしれません。


 物語の方は、常夜衆の、その首領の正体が判明し、最終目的に向けて動きだした常夜衆のために江戸が炎に――というクライマックスでこの巻は終了。
 江戸を血と炎に染め、家光を贄にせんとする敵の真の目的とはなにか…第2巻も少しでも早く刊行していただきたいものです。

 なお、連載の方は先月で完結しましたが、すぐに第二シリーズが開始。今後も岡村十兵衛の活躍に期待できそうです。

「柳生無頼剣 鬼神の太刀」第1巻(岡村賢二&太田ぐいや リイド社SPコミックス) Amazon
柳生無頼剣鬼神の太刀 1 (SPコミックス)

|

« 「男たちの戦国 新編武将小説集」 敗者の中の美しさ | トップページ | 「快傑ライオン丸」 第07話「呪われた金山 ギンザメ」 »

コメント

私は連載版も読んでいますが第二シリーズにはいきなり武蔵が登場したりして、この先どうなるのか楽しみです。

投稿: ジャラル | 2010.12.15 23:19

第二シリーズ、いきなり十兵衛さんが黒くなってて驚きました(笑)
武蔵さんはいい感じに人格破綻者で、こちらもいいですね

投稿: 三田主水 | 2010.12.19 22:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「柳生無頼剣 鬼神の太刀」第1巻 見参、岡村十兵衛:

« 「男たちの戦国 新編武将小説集」 敗者の中の美しさ | トップページ | 「快傑ライオン丸」 第07話「呪われた金山 ギンザメ」 »