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2010.12.21

「射雕英雄伝EAGLET」第5巻 ついに両雄並び立つ!

 もう一つの射雕英雄伝、「射雕英雄伝EAGLET」もこの第5巻でついに完結。郭靖と黄蓉の旅も、ここで幕となります。
 西毒・欧陽鋒の邪術により、己の意志を奪われた洪七公。意志を失う寸前の洪七公から、最後の降龍十八掌の伝授を受けた郭靖は、死地と承知で、洪七公と欧陽鋒の待つ趙王府へ向かうことになります。

 その戦いに同行するのは、洪七公の配下の丐幇の者たちと、黄蓉、そして穆念慈。
 その前に立ち塞がるのは、完顔康――
 かくて、全ての役者が揃い、ここに最後の戦いの幕が開くこととなります。

 これまでも何度も書いてきましたが、本作の展開は完全に原作を離れたもの、噴飯もの! と怒る原作ファンの方もいらっしゃることでしょう。
 …しかし、個人的にはこれが(これまで同様)面白かったのです。

 襲撃者の中に穆念慈の姿を見て動揺する完顔康と、かつて自分を救った男の正体が完顔康であると知った穆念慈の想い。
 洪七公を救うために敵陣深く入り込んだ郭靖の前に立ち塞がる、量産型(?)降龍十八掌使いとの対決(字で書くと馬鹿馬鹿しく見えるかもしれませんが、この展開はなかなか燃える!)

 そして最強の敵となった洪七公に対し、郭靖と完顔康が背中を合わせて挑む! というシチュエーションは、これまで郭靖と完顔康の対決に絞って物語を描いてきた本作だけに、最大の盛り上がりと言って良いでしょう。


 もちろん、原作と比べれば不満は尽きません。
 原作で極めて印象的だった東邪は結局シルエットのみの登場、他の五絶である南帝と中神通は全く登場せずと、原作の魅力の一つを構成していたキャラクターたちの多くが登場しないのはやはり勿体ない。

 何よりもストーリーがほとんど武功比べに終始してしまい、原作にあった権力との距離感の持ち方、身の処し方――これは金庸作品においてはしばしば重要な要素となるものですが――にまで及ばなかったのは、「射雕英雄伝」を冠する作品として残念でなりません。

 とはいえ、そうした点があることを割り引いても、私は最後までこの作品を楽しませていただきました。


 既に原作の忠実な漫画化が存在する以上、ここでもう一つ忠実な漫画化を行っても仕方がない。
 むしろ、現代の日本の漫画としてアレンジを加え、一種武侠入門編的な作品にして見せるというのは、これはこれで正しいアプローチであったと思います。

 いや、それに金庸を使うな、というのもごもっともな意見ですが、基本的に他メディア化には原作と異なる味付けを求めてしまう私としては、なかなかに楽しませていただきました。

 色々と大変なことも多かったとは思いますが、作者には今後も武侠漫画にチャレンジしていただきたいものです。
 推理ものが好きということですが、次は古龍ネタで行ってくれたら、私が大喜びします。


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