文庫版「柳生大戦争」 十兵衛封印
第2回舟橋聖一文学賞を受賞した荒山徹「柳生大戦争」が文庫化されました。
本作については、既に連載中にこのブログで取り上げており、単なる文庫化であれば改めて取り上げることはないと思っていたのですが…いやはや巻末に大変な爆弾が仕掛けられていたとは。
その爆弾とは、巻末に付された文庫版あとがきと、書き下ろしの掌編であります。
愛読者であればよくご存じかと思いますが、荒山徹は自作について語ることが極めて少ない作家。
これまで結構な数の作品をものしている中で、あとがきが付された作品は数えるほどしかありません。
そのあとがきが、しかも文庫のために新たに付されたとあれば、これは見逃せないものですが――
豈図らんや、それが柳生十兵衛との決別、柳生サーガの終結宣言だったとは!
わずか2ページゆえ、詳しい内容はぜひ原文に当たっていただきたいのですが、作者の柳生もの第一作である「十兵衛両断」から始まり、この「柳生大戦争」との関わり、そしてこれまでの十兵衛の活躍を語るこのあとがき。
その末に待っていたのが打ち止め宣言とは、本当に驚かされます。
そしてその最後の作品となるのが、書き下ろしの「十兵衛断裁」であります。
柳生庄に籠もって著作活動を続ける晩年の十兵衛のもとに、これまで付き合いのあった版元から突きつけられたのは、著作の断裁宣言。
断裁とは要するに、売れ残った本が返品されたために廃棄処分するということ。
それに対し十兵衛は、最新作が今年度の上泉伊勢守賞にノミネート(って言葉をそのまま使ってる!)されており、受賞間違いなしと主張するのですが…
…この文章を書いているうちに、真面目に驚いていいものか不安になってきましたが、まあ大変な内容であります。
この宣言がなされた理由を額面通りに取ってよいものか、そして今後荒山作品がどうなるのか、それは大いに考えさせられる問題ではあります。
しかし、あくまでもこれからも荒山作品の基本は、伝奇色横溢したエンターテイメントであり、日朝関係史小説。
柳生という武器をあえて封印した作者の新境地を、一ファンとして期待したいと思います。そしてまた、その封印がいつか解かれることも…
ちなみに細谷正充氏の解説には別な意味で驚きましたよ。
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