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2011.01.06

「雪月記」第2巻 メフィストフェレスとともに

 ぼやぼやしているうちに連載終了してしまいましたが、「雪月記」の第二巻、未来を視る「浄天眼」を持つ神子・緋乃の戦いを描く戦国ファンタジーの続巻であります。

 人里離れた隠れ里・照遠を救うため、人の死をあらかじめ体験することにより、未来を知る能力「浄天眼」を使い、軍師として活動する緋乃。
 激しくしのぎを削る戦国大名の間を巧みに泳ぎ回り、自らの、いや照遠の利のために動く彼は、今回、馳宗頼が治める土狩の地に目を付けます。

 第一巻で描かれた戦いの戦後交渉の折衝役として宗頼に招かれた緋乃に依頼されたのは、しかし硫黄鉱山のある流山の地の攻略。
 その依頼を受けた緋乃ですが、しかし彼がそのままおとなしく従うわけもありません。

 そもそも宗頼という男、美女をコレクションして、自らの下から逃れようとした者を殺して剥製にしておくという変態。
(そもそも「土狩」の名の由来が「人狩り」に由来するというのだから凄まじい)

 いくら戦国時代でもそれはいかがなものかというレベルのアレですが、そういう相手であるからこそ、容赦なくカモにすることができる…と言いたいところですが、しかし、緋乃の計は、様々な人と土地を巻き込み影響を及ぼしていくこととなります。

 作中で言われるように「強きを助け弱きをくじき そこから染み出た汚れた上ずみをすする」緋乃の生き方は、それが照遠の地を、民を救うという大義があってこそのもの。
 それがあるからこそ、彼は汚れ役を演じるのであり、また演じることができるのですが…

 しかしこの巻では、本筋と平行して、緋乃自身も知らない浄天眼の秘密が、緋乃の近くに仕える謎の男・過徒の口から語られることになります。
 照遠の民を救うため、緋乃に用いられる浄天眼。その力の源となるのが、実は…というのは、かなり衝撃的などんでん返しであり、物語の構造すら一変させかねぬもの。

 実は第一巻でもそれが遠回しに語られていたのですが、それが今回のエピソードでも、そのルールが、更なる悲劇を招くことになります。

 しかし神子である緋乃も知らないその秘密を、なぜ過徒が知っているのか…明らかに人外と見える力を持ち、含みのある言動で緋乃を惑わす彼は、緋乃にとってのメフィストフェレスと言えるかもしれません。


 …が、面白くなりそうな要素が散りばめられつつもこの第二巻が今一つ盛り上がらないのは、一つには今回の緋乃の最終的な狙いがわかりにくかったこともありますが、それ以上に緋乃と過徒の関係がわかりにくいことが大きい。

 過徒にどう見ても尋常ではない依存心を見せる緋乃と、その緋乃にどう見てもヤンデレな執着心を見せる過徒…
 この二人のニアホモ的関係性が強烈すぎて――その割にはその中身が見えず――ストーリーがぼやけてしまった印象があるのは残念です。
(その煽りを食ってか、この巻のラストで描かれる悲劇が、どうにも取って付けたものに見えてしまうのが何とも)

 帯では大河時代劇画を謳いつつも、キャラクタードラマ的な側面が強いのが、本作の違和感の源なのかもしれませんが…
 おそらくは残り一巻、それがどこまで解消されるのか、見届けたいと思います。

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