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2011.01.10

「国境の南 妻は、くノ一」 去りゆく彦馬、追われる織江

 「妻は、くノ一」シリーズも、いよいよ残すところ本作を含めてあと二巻。彦馬と織江を巡る物語は、誰かさんの妄想のおかげで大変なプレイヤーまで乱入し、ラスト直前にも関わらずとんでもない混沌ぶりとなってきました。

 いつまでも終わらぬ追っ手との戦いに疲れ、自らのため、そして何よりも危険に巻き込まれかねぬ彦馬のため、彦馬をあきらめることを決意したた織江。彼女は、得意とする心術(催眠術)を自分にかけて、彦馬への思いを断ち切ろうとします。

 そんな矢先、彼女の前に現れたのは、以前よりシリーズに顔を出していた親友のくノ一・お蝶。
 果たして彼女が新たなる刺客なのか…織江の心は乱れるばかりであります。

 さて、彦馬の方にも人生の大きな転機が訪れます。
 かつての主君であり後見役ともいえる松浦静山の悲願である開国――そのための土台作りのため、密かに海外に渡航する船の船長に選ばれた彦馬は、江戸を離れ、平戸に向かうことに…

 さらにその下工作のため、長崎のシーボルトに近づいた雁二郎の身にも大変な異変が!

 と、レギュラー陣の人生に次々とこれまで以上の波風が立つ中、最後の(?)爆弾が投下されます。
 かつて織江の母・雅江に懸想していた鳥居耀蔵。雅江が亡くなったあとふぬけのようになっていた彼は、その娘である織江に執心するようになるのですが――

 織江を手に入れるためにDTっぷり溢れる妄想を実現させるため、彼が巻き込んだのはなんと将軍家斉。
 かくて家斉直属の美女狩り美男隊四天王が、織江の身を狙うことになります。

 この鳥居の暴走に、織江を嫁にという想いを諦められぬ御庭番頭・川村も触発され、いよいよ狭まる織江包囲網。
 いやはや、各巻がパターンにはまっているようでいて、なかなか先が読めなかった本シリーズらしく、ここに来てとんでもない展開の連続であります。

 しかしそんな派手な(?)展開の一方で、しんみりした展開もあるのが本シリーズらしいところ。
 江戸を離れる彦馬の心残りは、彼が教えてきた寺子屋の生徒たちですが、彼らも、疑問を持ったことを自分たち自身の努力で解決し、真実をつかめるまでに成長しました。
 さらに、彦馬が途中まで手助けしたとはいえ、これまで彦馬に助けられてばかりだった町方同心・原田も自力で事件を解決…

 そして去りゆく彦馬が子供たちに残した言葉――これがまた、実に垢抜けなくて、ほかの場で出てきたらちょっと脱力してしまいそうな内容ではありますが、しかしそれがいかにも彦馬らしい。
 これにて江戸での彦馬の裏表の役割も無事終了、心残りは織江のことのみですが…

 お話的にアラはありますが(織江の努力も恋の魔力の前には無意味だった、という身も蓋もない結論には驚きました)、そうした点があってもなお、やっぱり面白い本シリーズ。
 最後の最後まで希望と元気は捨てずに、ハッピーエンドで完結していただきたいものです。


 それにしても雁二郎は今回もものすごい活躍ぶりで…

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コメント

私は、未読なので論評する資格ゼロですが(汗)、なかなか面白そうなシリースですね。旦那さんがいて、活躍するくノ一ってのはTV,小説通じても珍しいのでは。
男性の忍者と組んで、行動することはもちろん多いですが。なんか、山田風太郎の
ようなお色気路線とは、違った面白さがあるみたいで、時間があったら読みたいです。
.....お色気衣装でアクションしたり、敵に捕まったり、悲運の最後をとげたり、
助けられたり。時には「女だから」と情けをかけられ助けられたり
(本人にラッキーなのか、屈辱的なことなのか笑 )正義だったり、悪だったり。
いやあ「くノ一」って美味しいキャラですなあ(汗)

投稿: エージェント・スイス | 2011.01.10 20:12

エージェント・スイス様:
いわゆる「くノ一」とはちょっと違う印象の、もっと生身の女性に近い(?)キャラクターたちが登場するお話です。
お話的にはロミオとジュリエットなのですが、ユーモアとペーソスというか、そういう味付けで、なかなか面白いシリーズですよ。

投稿: 三田主水 | 2011.01.17 00:42

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