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2011.01.03

「天下人ソウル」 目指せ天下の大スター!

 天下分け目の関ヶ原の最中、謎の祠に「天下人(スター)になりたい」と願った石田三成は、不思議な力によって魂が家康に乗り移ってしまった。成り行きから戦に勝ってしまった三成は、唯一真実を知る天海とともに天下人への道を歩み始めるが、その前に立ちふさがったのは意外な存在だった!?

 最近は石田三成が色々と人気者のようで、様々な作品に登場していますが、間違いなくその中で最もユニークな部類に入るのは本作でしょう。
 こともあろうに関ヶ原の最中に三成と家康の魂が入れ替わり、三成が家康として、天下人(スター)への道を歩もうとするのですから、まさに空前絶後…というのは言い過ぎかもしれませんが、他に類のない怪作コメディであります。

 これはジャンルと言って良いのかわかりませんが、時代ものに限らず(というよりむしろ時代もの意外で)「入れ替わりもの」とでも表すべき作品があります。
 ある人物が、自分と全く異なる境遇の人物と入れ替わり(取り憑き)、他者の人生を歩むことで、自分の人生を見つめ直したり、新たな可能性を見いだしたり…という趣向の作品のことですが、本作もまさにその系譜に属するものでしょう。

 何しろ本作の三成は、後世の我々が受けるイメージをそのまま形にしたような人物。
 優等生タイプで、そのくせ調子に乗りやすく、自分の才能を鼻にかけて周囲を見下し、その挙げ句どんどん孤立していってしまう。
 そんな三成が天下人一直線の家康の中に入ってしまったわけで、これは大変なことに…なるかと思えば別の意味で大変なことになるのがオカシいのです。

 古文書の予言から唯一この事態を予見していた南光坊天海の補佐はあるものの、戦後の論功行賞や不肖の息子・秀忠の扱いなど、天下人といっても楽しいことばかりではなく、ままならぬことばかり。
 それでも悪運と周囲の勘違いで何とかクリアしてきたものの(この辺りの展開も入れ替わりものの定番であります)、しかし三成の家康の前にとんでもない敵が立ちふさがることになります。

 それこそは、真の家康…の魂が入ってしまった淀君。実は魂の入れ替わりがあったのは三成と家康の二者ではなく、三成と家康と淀君の三者――すなわち、ここに誕生したのは三成の家康と、家康の淀君と、淀君の三成だったのです。

 そのうち淀君の三成は、あわれ六条河原で首を討たれてしまい、残る二人が天下を巡って争うことになるのですが、家康の謀略に淀君の権力を併せ持ったのが相手では、いくらなんでも相手が悪い。
 また肝心なところで変にプライドの高い三成の悪癖が出て、徳川方の命運は風前の灯火に…


 と、ここから先は読んでのお楽しみですが、さんざんおバカなことをやっておいて、実は…というのも、お約束ながら実に良い。
 そう、無茶苦茶をやっているようでいて、本作はきっちりと成長物語の王道を行く作品――と言い切るのもどうかと思いますが、思い切り笑わされて、最後の最後でグッとくる展開が待っていたのには、思わず「やられた!」と言いたくなりました。
(個人的には、終盤で「あれ、パラレルワールド…?」と思わせて実は、というのが何とも心憎いのです)

 人はスターに生まれるのではなく、スターになるのだと、そんなマジになることもないかもしれませんが、ヘタウマ調の絵柄に二の足を踏んでいると勿体ない作品であります。

「天下人ソウル」(鮫島真 集英社ジャンプコミックスデラックス全2巻) 第1巻 Amazon/第2巻 Amazon
天下人ソウル 1 (ジャンプコミックスデラックス)天下人ソウル 2 (ジャンプコミックスデラックス)

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