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2011.01.02

正月時代劇「隠密秘帖」 贅沢な予告編…?

 天明四年三月、江戸城内で田沼意次の子・意知が佐野善左衛門に斬りつけられ、八日後に没した。刃傷の原因を探るよう密命を受けた小人目付・神谷庄左衛門は、同僚と二人、佐野の周囲を調べ始める。その中で、私怨と思われた事件の背後の陰謀の存在を知る庄左衛門だが、彼らの身に魔の手が迫る…

 今年のNHKの正月時代劇は、舘ひろし主演の「隠密秘帖」
 いかにも伝奇的なタイトルといい、八日からスタートする土曜時代劇「隠密八百八町」の主人公の父を描くというユニークな趣向といい、楽しみにしておりました。

 物語の中心となるのは、佐野善左衛門による田沼意知への刃傷事件です。
 江戸城内で突然佐野に斬りつけられた傷が元で意知が亡くなったこの事件は、江戸城内での刃傷沙汰という事以上に、当時の最高権力者・田沼意次の子が殺され、田沼時代終焉のきっかけとなったという点で、大きな意味を持ちます。

 当然というべきか、この事件は様々な時代ものの題材として扱われていますが(例えば最近では上田秀人の「奥右筆秘帳」など)、多くの場合、佐野の動機に焦点が当てられているように感じます。

 それというのも、佐野が凶行に及んだ動機というものが不明であるためで――役に付くために賄賂を送っていたのを無視された、家系図を田沼に簒奪された、領地の佐野大明神を田沼大明神にされた等々――一応私怨ということになっていますが、その不明瞭さが、フィクションの介在する余地として好まれるのでしょう。

 本作において、主人公・神谷庄左衛門が探ることになるのは、まさにこの点であります。
 小人目付としてこの事件の探索を命じられた庄左衛門は、佐野の同僚や馴染みの女郎屋、さらに意知を手当した医師などを巡り、佐野の動機と意知の死の真相、そしてその背後のある意志の存在を知ることになるのですが…

 上に述べたように、佐野の刃傷は題材的には決して珍しいものではありませんが、刃傷から意知の死まで八日の間があることに注目し、そこに陰謀の存在を描くというのは、なかなか面白いアイディアではあります。
 さらに、そこに実は幕府内のガス抜きのためだけに命を与えられた(当然本人はそれを知らない)庄左衛門が頑張りすぎてしまったために、隠したかった真相が露わになってしまうという構図も、むしろ社会派ミステリ的で面白いのですが…


 しかし、実際に映像で見ると、これが誰得としか言いようのない作品となっているのには、驚かされます。
 主人公の剣戟が半分過ぎてからようやく出てくることに象徴される展開の地味さもさることながら、舘ひろしをはじめとするキャストも――さすがにNHKらしくかなり豪華ではあるのですが――地味。
(さらに言えば舘ひろしの殺陣はかなり心配になる代物で…)

 さらにストーリー的にはかなり悲惨な結末を迎えるとくれば、元旦のゴールデンタイムにこれを流したのはある意味英断とすら感じられます。
 売りの一つである「隠密八百八町」への繋がり、親から子への絆も、小人目付の子として苛められ、その仕事に疑問を持った子を、庄左衛門が張り飛ばす程度で示されても…と言うほかありません。


 終わってみれば、贅沢な新番組の予告編という印象の本作、映像など丁寧な作りではあっただけに、正月早々勿体ないというほかありません。
 シリーズの方はチームもののようですので、もう少し派手な作品になる(そして舘ひろしの殺陣もカバーできる)と思いますが…

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