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2011.01.05

「隠密独眼竜」 六連銭真田流vs柳生家一門隠密陣

 大坂夏の陣より二十五年、豊臣秀頼の娘・夜叉姫を頭に戴く真田残党が暗躍を開始した。真田幸村の子・幸之助、霧隠才蔵の子・疾風道人らによる将軍家光暗殺の魔の手が迫る。お家再興の悲願に燃える一党の陰謀に挑むのは、幕府隠密隊を束ねる柳生十兵衛光厳。柳生剣法と真田忍法の死闘の行方や如何。

 突然ですが、これから高木彬光の時代伝奇小説を紹介していきたいと思います。
 高木彬光といえば、本格推理小説界の巨匠でありますが、しかし決して少なくない数の時代小説を――それも時代伝奇小説を――発表しています。
 これまでも時折このブログで取り上げてきましたが、今年は不定期ながら(ほぼ)全作品紹介を目指していきたいと考えている次第です。

 さて、その第一回は、柳生十兵衛が、江戸に現れた真田家残党と対決する「隠密独眼竜」であります。

 徳川家に滅ぼされ、炎に消えた大坂城。しかしそこから、豊臣秀頼の子を身ごもった女が落ち延び、真田家残党の庇護の下、女児を産んでいた、というのが本作の基本設定。
 美しく成長したものの、夜叉姫なる恐ろしげな名乗りを上げた彼女を奉じ、幸村の子や才蔵の子、さらには老いたる猿飛佐助が、豊臣家のお家再興、そして何よりも徳川将軍家への復讐のため、様々な策を巡らし、将軍家光の命を狙うこととなります。

 一方、それに対するのが、隻眼の剣士・柳生十兵衛その人。
 本作における十兵衛は、将軍家指南役の座を退き、変わって幕府隠密の総元締めというべき座にある――それゆえ本作のタイトルは「隠密独眼竜」――人物ですが、自らも剣を執って最前線で活躍するヒーローです。

 かくて、太平の世の反映の陰で激しくぶつかり合う柳生と真田…時に江戸城を炎に染めて繰り広げられる戦いは一進一退、手段を選ばぬ真田側のテロ行為に対し、柳生側は時にこれを未然に封じ、時にこれを逆に利用して一歩一歩迫ることになるのであります。


 …と、書けば実に面白そうなのですが、実際に作品に触れてみると、かなりテンションが低い、というかなかなか読んでいてこちらが燃えてこないのが、本作の不思議なところ。
 いや、実は本作に限らず、高木時代伝奇小説はほとんどがこの調子なのですが――

 これは想像するしかないのですが、作者の時代小説に向ける熱意がどうも…という印象で、それが作品の妙な堅さ、体温の低さに繋がっているのではないかな、という気がしております。

 柳生十兵衛対真田十勇士残党という、ある意味ドリームマッチにあってこれは実に残念なお話で、作中、柳生宗矩の台詞で、
「真田幸之助みずからが幸村譲りの六連銭真田流の兵法で大江戸将軍家のおひざもとを揺さぶろうというならば、それに対抗するものはわが柳生家一門の隠密陣をおいてほかにはないのだ」
などと実に格好良い台詞もあるだけに、いやはや勿体ないお話であります。

 なお、作者の柳生十兵衛ものには、短編連作「隠密飛竜剣」もありますので、近日中にこちらも取り上げてみたいと思います。


 ちなみに何故か本作の十兵衛の名は「三厳」ではなく「光厳」。
 実は光厳と三厳、柳生十兵衛は二人いたのだ! という展開だと面白いのですが、そういうことはもちろん(?)ないのでした。

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コメント

 初めまして。
 このたび検索サイトから貴ブログへ辿り着きました。
 高木先生の時代小説が好きなのですが、あまり話題にされず残念に思っていたところ、こうして扱って下さるブログがあって嬉しく思います。
 
 貴ブログでは高木先生の時代小説を「不定期ながら(ほぼ)全作品紹介を目指していきたいと考えている」との事。楽しみにしております。

投稿: 黒田 | 2011.04.24 01:22

黒田様:
はじめまして!
高木先生の時代小説ファンとのこと、数少ない同志に出会えて私も嬉しいです。
今ではほとんど忘れ去られている高木伝奇時代小説ですが、今読んでも面白い作品も色々あると思います。
(私は時代伝奇小説にはまったきっかけの一つは「江戸悪魔祭」ですから…)

果たして(ほぼ)全作品紹介できるのはいつになるかわかりませんが、気長にお付き合い下さい。
何よりも、時々「かわいさ余って憎さ百倍」なことを書くかもしれませんが、ご笑覧いただければ幸いです。

投稿: 三田主水 | 2011.04.27 00:53

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