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2011.02.07

「ムシブギョー」第3巻 明るすぎる熱血

 巨大な蟲たちの群れから江戸の人々を守る蟲奉行所こと新中町奉行所の面々の活躍を描く「ムシブギョー」の最終巻であります。といっても、作品自体は月刊の「週刊少年サンデー超」誌から、「週刊少年サンデー」本誌に移動という扱いで、あくまでも月刊分はこれで〆、という扱いであります。

 その第3巻の2/3程度を使って描かれるのは、蟲奉行所寺社見廻り組の与力・白榊と主人公・月島仁兵衛の対立と和解の物語です。

 仁兵衛の所属する市中見廻り組が、その名の通り江戸市中を守るのに対して、寺社を管轄とする寺社見廻り組。
 その構成員は旗本から選抜され、身分も実力も予算(?)も市中見廻り組以上、と自負する面々であります。

 その寺社見廻り組と共同作戦…とは名ばかりのイジメを受けることとなった仁兵衛が、しかしそれを乗り越えて白榊に自らの信念を認めさせるまでを描くこのエピソード。
 はみだし部隊が、エリート部隊に見下されながらも奮闘し、エリートたちの鼻をあかすというのは、これはもう定番パターンではあり、本作もそのパターンから踏み出すものではありません。

 しかし、実際に確固たる身分が存在した江戸時代であれば、なるほどある意味リアリティのある展開であると言えるでしょう。
(市中見廻り組は、武士どころか常民から外れた者も多く含まれていますから…)

 その他のエピソードでは、文字通りヴェールに包まれていた蟲奉行その人が登場。
 その正体を知らぬ仁兵衛と出会い、交流が生まれる…というのは、これまた定番パターンですが、作中で仄めかされる単なる奉行所のトップではありえない奉行の独特の役割と、川開きの花火見物というイベントとが絡められることにより、なかなか気持ちの良いエピソードとなっています。


 と、ストーリー的には淡々と進行し、そのまま週刊連載に移行する形となった感のあるこの第三巻。
 ラストに収められた瓦版書きの少女のエピソードを含め、今回も仁兵衛のまっすぐな想いが、周囲の人々を感化し、動かす様が描かれるのですが――毎回そのパターンが続くと、いささかこちらも考えさせられるというのも正直なところではあります。

 本作を読み返してみて改めて感じるのは、仁兵衛の信念に――その信念を貫くことに――陰がない、という点であります。
 彼の信念はどこまでも正しく、明るく、誤りがない…まことに熱血少年漫画に相応しいものに見えますが、しかしそれに物足りないものを感じてしまうのも事実。

 こうした比較は意味がないかもしれませんが、作者の師匠である藤田和日郎作品の主人公たちが、いずれも熱い魂を持ちながらも、どこかに陰や重さを抱える、あるいは熱血の代償をどこかで支払っているのに比べると、仁兵衛の熱血は、明るすぎる、軽すぎると…改めて感じた次第です。

 もちろん、物語はまだ始まったばかりであり、これから仁兵衛の物語も深まっていくのでありましょう。
 仁兵衛の信念が揺るがされる時を、そしてそれでも仁兵衛が信念を貫く様が描かれることを、週刊版たる「常住戦陣!! ムシブギョー」に期待したいところです。

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