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2011.02.06

「水戸黄門」 第42部第15話「内蔵助殿、助太刀致す」

 滅多に取り上げないような作品(というより初めて)、しかも一週間近く前の回ということで恐縮ですが、伝奇者的になかなか面白かったのでここに紹介。
 水戸黄門 meets 大石内蔵助の一席であります。

 旅を続ける水戸のご老公一行。赤穂に入った黄門様が、浜の塩田に目をやると、そこにはどこかで見たような人足が働いていて――と、それは大石内蔵助、演じるは市川右近!

 と、あまりにも衝撃的なオープニングで始まった今回は、忠臣蔵から二十数年前、大石が赤穂藩の家老となったばかりの時期を舞台とした物語。
 赤穂藩の産物として名高い塩を巡ってのお家騒動話なのですが…

 さて、冒頭でいきなり人足に身をやつしていた大石。
 塩の売買に疑問を持った彼は、しかし悲しいかな家老といってもまだ若輩者、他の家老に押し切られて調査もできず、やむを得ず、自ら潜入捜査を行っていたのです。

 …と、それにしてもあまりに豪快な設定ですが、前の副将軍が身分を隠して諸国を回る世界で、それを言うだけ野暮なのでしょう。
 そうか、そういう世界観を前提にしての趣向なのか! というのはこちらが勝手に納得していることではありますが、「やつし」というのは歌舞伎の世界でも定番中の定番、大石に市川右近を当てたのは、そのあたりのことがあって…かどうかはわかりませんが。

 さて、お話の方は、当然ながら黄門様は大石に味方して(冷静に考えると一藩の家老の顔をここまではっきり黄門様が知っているものかと思いますがそれはさておき)、塩商人・湊屋の周囲を探り始めるのですが…

 さて、潜入捜査を進めるうち、その大石が淡い想いを寄せるようになった湊屋の使用人・おゆき。
 彼女は、子連れで生活が苦しいのを良いことに湊屋に迫られて…というのはよくあるパターンだなあと見ていましたが、ここで一ひねりがありました。

 大石たちとは別に湊屋を探る怪しげな侍の一派。実はおゆきは彼らに送り込まれた密偵であり――そして彼らの正体は、赤穂の塩の製法を探りに来た吉良家の密偵!

 …いやはや、大石、赤穂とくれば吉良が来ないと物足りない(?)ところではありますが、冒頭に述べたとおり、舞台設定は忠臣蔵の遙か以前。
 吉良は関係なしでいくのかな、と思いきや、こういう絡め方をしてきたとは…いや面白いではありませんか。

 というわけで三つ巴の争いとなったわけではありますが、クライマックスはもちろん、悪家老のもとに乗り込んで、黄門様が印籠を見せつけるという展開になるわけですが――
 ここに大石も同行、クライマックスの口上の一部も、大石が実に気持ちよさそうに述べて、水戸黄門と大石内蔵助というヒーローの競演を飾ってくれます。
(ちなみにこの討ち入りシーン、バックで太鼓の音がデンデン鳴っているので、討ち入りにひっかけたBGMなのかと思ったら、攪乱のために外でうっかり八兵衛が叩いていたという小技の効かせ方も嬉しい)


 水戸黄門と大石内蔵助は、冷静に考えれば確かに同時代人ではありますが、しかし、お互いが属する「物語」がそれぞれあまりにも有名すぎるが故に、全く別世界の人物に思えてしまうのもまた事実であります。。
 今回描かれたのは、まさにその二つの「物語」、二つの「世界」が交わった瞬間。
 真面目に考えると無茶ではあるのですが、しかしぎりぎり無理ではない、そんな同時代人の交わりを描くのは、まさに時代伝奇の醍醐味でありましょう。

 果たして普段「水戸黄門」をご覧になっている方々がどんな感想を持たれたか気になるところではありますが、しかし私個人としては、二つの「物語」の交錯を、大いに楽しませていただいた次第です。


関連サイト
 公式サイト

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コメント

いや、最近の水戸黄門はみてないし、この回も見てません(汗)。しかし水戸黄門と大石内蔵助まさに夢の共演といった感じで、見てみたかったですな。確かにドラマ
小説では「同じ作品内の登場人物」といった感じででても、共闘いや共演は個人的に
記憶にないですな。........赤穂の二人の出会いより、二十数年後。
水戸藩邸で、赤穂浪士の討ち入りをきく水戸光圀。「もしや、あの時の若い家老が」
驚く光圀。
「おのれ、将軍家の膝下で、幕府直臣の吉良を討つとは。これは幕府への謀反も同じだ」
赤穂浪士の斬首、浪士の協力者、関係者、赤穂の旧臣の捕縛、根絶やしという
非道を強行しようとする将軍綱吉、側用人柳沢吉保。
「これは、謀反にあらず、義挙でござる」赤穂浪士の斬首から名誉の切腹へ、
逮捕された浪士の協力者、関係者の無罪釈放へ、光圀の戦いが始まる....
長文すみませんが、こんな「その後」を想像してしまいました。

投稿: エージェント・スイス | 2011.02.07 20:25

昔の東野英治郎さんの水戸黄門で、黄門様が浅野家のお姫様を救って、最後に姫が間も無く嫁ぐ事を告げ、黄門様が「して、お相手は?」「浅野内匠頭様です」「そうか、あの男は正直者の良い男じゃ。」とカッカッカツと笑って去って行った話を覚えています。お姫様は若き日の瑤泉院(阿久里)だったというオチでした。まあ確かに正直な男なのでしょうが(苦笑)。

投稿: ジャラル | 2011.02.09 22:13

エージェント・スイス様:
私も本放送で見るのは本当に久しぶりです。
しかし仰るとおり、数十年後のそんなドラマを想像させてくれるのが心憎いお話でした。
たまにはこういうのもいいですね。

ジャラル様:
えーっ、それは知りませんでした!
なるほど、粋な(?)趣向ですねえ…若き日の瑤泉院というのが渋すぎる

投稿: 三田主水 | 2011.02.11 23:38

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